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常に自分が正しい」と考える!?
トランプ大統領

 トランプ氏は米大統領就任以来、「常に自分が正しい」と考え、思うままに政策指示を出しているように見える。その主な例が、中東からの入国制限を指示する大統領令だ。それは米国内だけでなく、国際社会全体をも巻き込んだ論争に発展している。

 この大統領令を見ると、トランプ大統領は本当に米国の三権分立の制度を十分に理解しているのだろうかとさえ考える。トランプ氏の考えを突き詰めると、米国社会の価値観を支えてきた法律さえ、司法制度の権能には及ばないことになってしまいそうだ。

 まさに、天上天下唯我独尊のトランプ大統領だ。衝動的に指示を出し、それに反対する者に激昂する姿は、無分別な独裁者にさえ見えてしまう。一種の恐怖感さえ覚える。

 トランプ大統領は、入国制限に反対したイェーツ司法長官代行を解任した。それでも入国制限が法律に反しているとの見方は強い。シアトルの連邦地方裁判所は入国制限を指示した大統領令の一時的な差し止めを命じた。

 それをトランプ氏は「ばかげている」とツイッターで攻撃した。唯我独尊の大統領の司法軽視を受け、米国社会の混乱と亀裂は深まっている。それでは、米国を一つにまとめ上げて導くリーダーシップを発揮することは難しい。

 トランプ大統領の唯我独尊ぶりは、国際社会にも波紋を投げかけている。電話会談でオバマ政権時の協定に基づき難民を受け入れるよう諭したオーストラリアのターンブル首相に対して、トランプ大統領は激しい言葉を発し、会談は険悪な雰囲気のまま予定された時間の半分程度で終わってしまった。

 トランプ大統領には、国内の司法だけでなく、国家間の合意を遵守する精神もないのだろうか。その見方が正しいとすれば、米国は国のリーダーとしての資質の疑わしい人物を大統領に選んでしまったことになる。