成功する人のキャリアも偶然によって形成される

 成功した人物がよくインタビューを受けて、自分の人生を振り返ることがあります。小さい頃にこういうところに連れて行ってもらったとか、おばあちゃんが何度もこういうことを言っていたとか、この本に影響を受けたとか。

 もちろん、それぞれの心温まるエピソードは嘘ではないと思います。ですが、それらはやはり、成功者が改めて過去を振り返って記憶をたぐり寄せ、再編集した物語なんです。「小さい頃からおままごとが好きだった」+「おばあちゃんから入学祝いにエプロンをプレゼントされた」+「家庭科の先生に教わったカレーのレシピが忘れられない」……とくれば必ず、レストランのシェフとして成功した人に結びつくように思えてしまいますよね。

 実際、自分がオーナー・シェフとして人気店を構えた成功者はそのように語るかもしれない。

 でも、その3つの経験をした人は1万人いるかもしれません。そのうち、料理業界に入った人は多くても10%。ましてや店を持つまでに成功する人は1%以下だと断言できます。

 つまり、みんな偶然に支配されて生きているんだけれども、改めてインタビューされて記事にまとめるときには、一本筋が通っていたほうがわかりやすいから、筋が通った物語にしているのだと考えたほうがいい。書籍に書くときは、この傾向はもっと強くなります。一本筋が通っていないとじつに読みにくくなるからです。

だから、成功者が語る過去のエピソードを聞いて、自分も同じことを経験すればそのようになれるとは信じないでください。君が生きる時代とは、タイミングも、チャンスも、技術も、環境も、みんな違うんですから。