AIの台頭や一層のグローバル化、就活の地殻変動などの影響で到来する「仕事が消滅する時代」。そんな時代に必要とされるのが、「雇われる力」だ。本連載では、藤原和博氏の最新刊『10年後、君に仕事はあるのか?』の内容をもとに、「高校生に語りかける形式」で2020年代の近未来の姿と、未来を生き抜くための「雇われる力」の身につけ方などお伝えしている。今回はその第5回。
学歴重視で採用を決めるのには、十分に合理性があった
もし君が会社の人事部長になったら、どんな視点で新卒採用の面接をするでしょうか?
人事部長ロールプレイです。
とにかく芸達者でコミュニケーション能力が高そうな人ですか、それとも、実直な受け答えで仕事を確実にこなしてくれそうな人のほうを採用しますか?
大学時代にスポーツ系の部活をやってましたというパワーを評価しますか、それとも、囲碁の段位を持っている論理的な能力がありそうなほうを評価しますか?
緻密に会社のことを調べてきて自分にはこれができるとプレゼンする分析力に賭けますか、それとも、海外に長く住んだ帰国子女の可能性に賭けますか?
100人会えば、百人百様。ましてや相手は就職面接でのプレゼン力を磨いてきていますから、みんなよく見えてしまうかもしれませんね。
採用倍率は7倍を超えると質が維持されると言われていますから、10人採用するなら70人以上、100人採用するなら700人は面接したいところです。
10人だとなかなか多様性を確保することはできませんが、100人採用するなら、7割がたは学力重視で普通の仕事なら大丈夫だろうという人材を採用し、あとの3割に多様性を求め、いろんな色を織り交ぜることになるかもしれません。さらに3~4人は、迷うけれども勝負しようかなとか、意外と伸び代があってあとから大化けするかもとか、もしかしたら天才?……というようなリスクのある人材も交ぜるのが理想です。
たいていの組織の人事部長は、こんな考え方をしていると思ってくれれば、そう遠くないでしょう。今度は応募者の視点に戻って、よく聞いてくださいね。
まず、ベースとしての「人間力」を面接で見極めたい。実際には、なかなか難しいんですけどね。基本になるのは、その人の「人柄」と「体力」でしょう。
君だって人柄の悪い人とは一緒に働きたくないでしょうし、体力がなければ仕事が続きません。つまり、これらは最低限の条件だということ。
なぜ人事部長が体育会系の部長経験者が好きかと言えば、一般的には集中力や精神力、忍耐力に加えてリーダーシップがあるんじゃないかと解釈できるからです。
次に基礎学力。基本的な事務処理能力を保証する目安になります。
たいていの企業が学歴重視で採用を決めるのには、じつは十分に合理性があるのです。
なぜなら、どれくらいの偏差値の大学に入ったかは、少なくとも18歳時点での君の処理能力を保証するモノサシになるからです。高校までの成績が一生を決めるとまで言われたのは、学力の比重が「雇われる力」のなかでいかに高かったかを示しています。その大学で何を学んだかではなく、入試がどれほど難しかったかのほうを、これまでの企業は信用していたということになりますね。
しかし、この傾向は改まるはずです。