これまでテクノロジーは、多くの不可能を可能にしてきた。だが、テクノロジーが発達する勢いはすさまじく、「人間」や「知性」の意味を変えてしまうのではないか

要約者レビュー

 これはまた異色の本だ。だが、とにかく面白い。

『明日、機械がヒトになる ルポ最新科学』
海猫沢 めろん
296ページ
講談社
840円(税別)

 著者の海猫沢めろんは、溶接工やホストなどさまざまな職業を経たあと、小説家として2004年にデビューした人物だ。といっても本書『明日、機械がヒトになる ルポ最新科学』は小説ではなく、最新の科学の現場を追ったルポルタージュである。小説家という立場にもかかわらず、なぜこのような科学ルポを書きあげたのか。海猫沢の語る理由はいたってシンプルだった。「テクノロジーがぼくたちの想像力を超えはじめている。その現場を見たい」。

 テクノロジーはこれまでも、多くの不可能を可能にしてきた。だが、現在のテクノロジーの進化は、「人間」や「知性」の意味を変えてしまうかもしれないと海猫沢は述べている。たしかにテクノロジーが発達するいきおいはすさまじく、人間とテクノロジーの境目はこれからさらにあいまいになっていくだろう。

 かつてデカルトは『方法序説』のなかで、人間そっくりの機械と人間を確実に見分ける方法として、(1)自由に言葉を使えるかどうか、(2)自由意思があるかどうかという判断基準を提示した。しかし、そうしたことが機械にもできるようになったとき、はたして両者を峻別することができるのだろか。

 本書が提供するのは、これまで未到達だった領域へのロードマップだ。閉塞した旧来の人間観をこじ開け、新しい地平を目にしたいのならば、ぜひ本書を手にとってみてほしい。新たな人間観が立ちあらわれてくるにちがいない。 (石渡 翔)

本書の要点

・SR(代替現実)はVR(仮想現実)を上回るリアリティをつくりだす。これにより、これまでむずかしかった主観的な体験の伝達もできるようになるかもしれない。
・人間にとって最も理想的なインターフェースは人そのものである。
・ロボットが発展した将来、人間は自らの存在価値を何に見出すのか迫られることになるだろう。
・人間の「活動予算」は決まっており、たとえば原稿執筆作業には1日の29%程度しか使えない。
・幸せを定量化することは、かえって多様性の促進につながる。