「経済×地理」で、ニュースの“本質”が見えてくる!仕事に効く「教養としての地理」

地理とは、農業や工業、貿易、交通、人口、宗教、言語にいたるまで、現代世界の「ありとあらゆる分野」を学ぶ学問です。

地理なくして、経済を語ることはできません。

最新刊『経済は地理から学べ!』の著者、宮路秀作氏に語ってもらいます。

”地理”がわかれば、
経済ニュースの「なぜ?」もわかる!

 本連載は、地理という“レンズ”を通して、ダイナミックな経済の動きを理解するものです。

 地理とは、地形や気候といった自然環境を学ぶだけの学問ではありません。農業や工業、貿易、交通、人口、宗教、言語にいたるまで、現代世界の「ありとあらゆる分野」を学びます。人間の経済活動は、地理なくして語ることはできません。

 本日のテーマは、“日本と資源”です。

 日本はエネルギー資源、鉱物資源ともに産出量が少ない資源小国です。日本のエネルギー自給率は原油が0.3%、石炭が0%、天然ガスが2.6%と非常に低くなっています(数値はすべて2013年)。

 その日本が、各種資源をどこから輸入しているのかご存じでしょうか?「資源の輸入国」から、島国日本がとるべき経済戦略が見えてきます。

原油:中東に依存しつつも、近年はロシアからも

 日本の原油輸入相手国は、多い順からサウジアラビア、アラブ首長国連邦、ロシア、カタール、クウェート、イラン、インドネシア、イラク、メキシコ、ベトナムです。

 ちなみに、太平洋戦争直前の1935年時の最大輸入国はアメリカ合衆国でした。輸入量420万4000キロリットル中274万9000キロリットル、実に65.4%を占めていました。

 アメリカ合衆国が日本を困らせたいならば、簡単ですね。原油の輸出をストップすればよいだけの話です。

 日本はOPEC(石油輸出国機構)依存度が84.9%(2015年)と、非常に高い国です。しかし近年はロシアからの輸入を増やしていて、その割合は10%に達する勢いです。今後は日本の重要なパートナーとして、存在感を高めていくでしょう。

石炭:頼りはオーストラリア

 日本の石炭輸入相手国は、多い順からオーストラリア、インドネシア、ロシア、カナダ、アメリカ合衆国、中国です。

 特にオーストラリアは、輸入量の65%を依存している国で、日本にとっては欠かせない資源供給国です。オーストラリアは東部にグレートディヴァイディング山脈が縦断しており、モウラ炭田など有名な炭田が存在しています。

 近年はインドネシアからの石炭の輸入が増えています。1990年に93万5000トンだった輸入量は、2015年には3263万2000トンにまで増加しています。

天然ガス:需要が増え、今後ますます重要に

 天然ガスの産出上位国は、原油の産油上位国と同じ顔ぶれです。

 天然ガスの産出量は、アメリカ合衆国、ロシア、イラン、カタール、カナダの順に多くなっています。意外に思われるかもしれませんが、「アメリカ合衆国とロシアの両国で1位、2位を占めるもの」は天然ガスくらいしかありません。

 日本は天然ガスを輸入する際、液化して液化天然ガス(LNG)として輸入します。気体の天然ガスと比べて、LNGは体積が約600分の1にまで減るため、一度に大量に運べるという利点があります。これによって輸送コストが節約されます。