日本の経済パートナーは、アメリカではなく、
ロシア!?急速に進む「資源依存」
日本のLNG輸入相手国は、多い順からオーストラリア、マレーシア、カタール、ロシア、インドネシア、アラブ首長国連邦、ナイジェリアです。
2010年の日本のLNG輸入量は約7000万トンでしたが、東日本大震災にともなう原発の停止などによって火力発電用燃料としての需要が高まり、2014年には約8851万トンと26%も増加しました。
特にロシアからの輸入量は約603万トンから約845万トンへと大きく増えています。
鉄鉱石:あらゆる産業の基礎資源であり、最大の鉱産資源
鉄鉱石から作られる鉄鋼は「産業の米」といわれるほど、あらゆる産業にとって基礎資源となるものです。鉄鉱石の産出量は14億8000万トンで、すべての鉱産資源の中で最大です。
日本の鉄鉱石輸入相手国は、多い順からオーストラリア、ブラジル、南アフリカ共和国、カナダ、インド、ロシア、ウクライナです。
今後、日本にとって重要な国(地域)は?
日本の資源輸入国から見えてくることがあります。それは、東南アジアとオーストラリアの重要性です。日本は、鉄鉱石や石炭、天然ガスなど、オーストラリアから多くの資源を輸入しています。そして運搬には船舶を利用します。
資源とは本来、付加価値がほとんどないことから、価格は安いのです。そのため輸送費が相対的に高くなり、飛行機で運ぶには割が合いません。
オーストラリアを出た船舶は東南アジアを通過します。ペルシア湾で原油を積んだ船舶もまた、東南アジアを通過します。
日本と東南アジア諸国との関係が悪化してしまえば、船舶の航行が困難になるかもしれません。そのため東南アジアは日本にとって最重要シーレーン(海上交通路)なのです。
一方、原油や天然ガスなど、ロシアへの資源依存が急速に進んでいます。日本とロシアとの間には北方領土問題が存在するため、平和条約は結ばれていません。しかし、民間の経済的交流は拡大しています。2016年12月に行われた日露首脳会談でも、経済連携が話し合われました。
日本は資源小国です。どこから資源を調達するのか、その輸送にどこを利用するのか。
国家の政策を地理から考える「地政学」を、これからも重要視していく必要があるのです。地理学は「地政学」を学ぶのに、最も適した学問といえるでしょう。
宮路秀作(みやじ・しゅうさく)
代々木ゼミナール地理講師、日本地理学会企画専門委員
鹿児島市出身。「共通テスト地理」から「東大地理」まで、代々木ゼミナールのすべての地理講座を担当する実力派。地理を通して、現代世界の「なぜ?」「どうして?」を解き明かす講義は、9割以上の生徒から「地理を学んでよかった!」と大好評。講義の指針は「地理とは、地球上の理(ことわり)である」。生徒アンケートは、代ゼミ講師1年目の2008年度から全国1位を獲得し続けており、また高校教員向け講座「教員研修セミナー」の講師や模試作成を担当。いまや「代ゼミの地理の顔」。2017年に刊行した『経済は地理から学べ!』はベストセラーとなり、これが「地理学の啓発・普及に貢献した」と評価され、2017年度の日本地理学会賞(社会貢献部門)を受賞。大学教員を中心に創設された「地理学のアウトリーチ研究グループ」にも加わり、2021年より日本地理学会企画専門委員会委員となる。「Yahoo! ニュース」での連載やラジオ出演、YouTubeチャンネルの運営など幅広く活動。
「土地と資源の奪い合い」から、経済が見える!
経済を動かしているのは地理である。
世界の経済情報を観察していると、そう思えることが多々あります。
なぜ、土地も資源もない日本が経済大国になれたのか?
なぜ、中国は2015年に一人っ子政策をやめたのか?
なぜ、トランプ大統領はTPPから離脱したのか?
これらの因果関係を解明するヒントは「地理」に隠されています。
地理とは、地形や気候といった自然環境を学ぶだけの学問ではありません。農業や工業、貿易、交通、人口、宗教、言語、村落・都市にいたるまで、現代世界で目にする「ありとあらゆる分野」を学びます。
「地理」を英訳すると「Geography」です。これはラテン語の「Geo(地域)」と「Graphia(描く)」からなる合成語といわれています。
現代においては、写真を1枚撮るだけで、自然はもちろんのこと、そこで暮らす人々の衣食住、土地利用など、実にさまざまな情報が写し出されます。
しかし、カメラが存在していなかった時代は、これらの情報をすべて描き出していたのです。まさしく「Geo(地域)」を「Graphia(描く)」。これが地理の本質なのです。
地理とは、表面的な事実の羅列ではありません。「地域」に展開するさまざまな情報を集め、分析し、その独自性を解明するものです。地理を学ぶことで、土地と資源の奪い合いで示される人間の行動に、より深い解釈を加えることが可能です。
仕事に効く「教養としての地理」
本書『経済は地理から学べ!』は、「立地」「資源」「貿易」「人口」「文化」という5つの切り口から、今と、そして未来をつかむための視点を提供します。
地理では、さまざまな要素がかかわり合って「物語」が成り立つことを「景観(けいかん)」といいます。現代世界を単なる出来事として頭に残すのではなく、「誰かに話したくなる」ような、背景知識を持っているだけで世界は面白くなります。
本書を通して、世界の「今」を見定め、そして「未来」を先取りしてください。
『経済は地理から学べ!』
6万部突破のベストセラー!
「立地、資源、貿易、人口、文化」を知れば、世界はこんなに面白い!
★トランプのTPP離脱を読むカギは“国境”
★日本経済を秘かに支える“水の力”とは?
★EU経済の急所は“2つの河”にあり
地理とは、地形や気候といった自然環境を
学ぶだけの学問ではありません。
農業や工業、貿易、流通、人口、宗教、言語にいたるまで、現代世界の「ありとあらゆる分野」を学ぶ学問なのです。
地理という“レンズ”を通せば、ダイナミックな経済の動きを、手に取るように理解できます。
【目次】
序章 経済をつかむ「地理の視点」
第1章 立地:地の利を活かした経済戦略
第2章 資源:資源大国は声が大きい
第3章 貿易:世界中で行われている「駆け引き」とは?
第4章 人口:未来予測の最強ファクター
第5章 文化:衣食住の地域性はなぜ成り立つのか?
特別付録「背景がわかれば、統計は面白い」
地図で読み解く44の視点
地理がわかれば、世界はもっと面白い!