先の首脳会談を見る限り、安倍総理とトランプ米大統領とはケミストリーが合ったようだが、1980年代半ばのロナルド・レーガン米大統領と中曽根康弘総理の「ロン・ヤス時代」がそうであったように、首脳同士の親密な関係は日米経済関係にとって、かえってマイナスに働く可能性もある。

 レーガン大統領のとった経済政策“レーガノミクス”が引き起こしたドル高を是正するためにレーガン大統領2期目に行われたプラザ合意が、急激な円高をもたらし、円高に伴う経済への悪影響の懸念が、過剰な減税・公共事業の拡大につながり、バブル経済を引き起こしたことは記憶に新しい。

 もちろんレーガンとトランプを同一視するつもりはない。時代背景(レーガン時代は冷戦)、政策思想(レーガンは小さな政府)、経済事情(当時は高金利下の不況、スタグフレーション)など異なる点も多い。だが、経済政策が与える財政赤字拡大への懸念という点で類似する。

減税しても増収とならず
レーガノミクスの見込み違い

 筆者は、83年から85年までの間、レーガン大統領の地元ロスアンジェルス総領事館で経済担当領事をしていた。自身の記憶をたどりながら、レーガノミクス(第1期)が、財政赤字の拡大、金利高騰、双子の赤字を招いたという点に焦点を当てて、レーガノミクスとトランポノミクスの経済政策の比較をしてみたい。

 レーガノミクスは、大幅な減税と歳出削減を組み合わせた政策パッケージであった。サプライサイド経済学の教えに従って、「減税をすれば人々の勤労意欲が増し、所得や消費が拡大し、税収も増加する」との見通しの下で、政権発足後4年目の84年には財政黒字を見込んでいた。

 しかし現実に生じたことは、大幅な財政赤字、金利の高騰、ドル高による貿易赤字の拡大、いわゆる「双子の赤字」である。