診断で最も重要なのは、ぜんそくを引き起こしているアレルゲン(アレルギー源)の特定だが、それを行わないまま安易に治療している医師が多い現状を、谷口医師は問題視している。

「アレルギーの治療で大事なのはアレルゲンを見つけることです。患者さんをアレルゲンから隔離する環境対策を、治療薬の服用と同時進行でやらなければ絶対によくなりません」

 若き日の谷口医師には、次のようなエピソードもある。

「どうしても症状が改善しないアスペルギルス(カビを原因とする病気の一つ)の患者さんがいたのですが、本人に聞いても、ご家族に聞いてもアレルゲンが分からない。そこで病院が休みの日に時間をとって、ご自宅に行ってみました」

 風通しもよく、すっきりと片付いた室内のどこにアレルゲンとなるカビがいるのか。探索を開始した谷口医師の目に飛び込んできたのは、天井板の間から見える屋根組だった。

「天井裏があるんだと、ハシゴをかけて昇ってみたら、昔牛を飼っていたんでしょうね、積み上げられたまま放置された藁に、びっしりとカビが生えていました。思わず、『あった、これがアレルゲンだ』って叫んでました(笑)。30年近くも前のことですが、今も鮮明に覚えています」

 今でこそ、若手に任せているが、かつての谷口医師は、どうしても改善しない患者に対しては「根性の塊のように(笑)」、会社や職場を訪問していたという。

専門外来があっても
アレルギー難民が増える理由

 経口ステロイド剤は、少量の服用でも長期間に渡ると骨粗しょう症を引き起こし、患者の命を縮める。背骨や大腿骨を骨折し、車イスで連れて来られる患者の余命は5年以下。しかもこうしたリスクは、「ぜんそくの治療ガイドライン」には強調されていない。

 そもそも、ぜんそくを正しく診断できる医師自体、あまりにも少ない。

 なぜ、医学が世界でもトップクラスで進んでいるはずの日本で、こんなことになるのだろう。