不動産取引で売主と買主の双方の仲介を同一の会社が行うことを「両手仲介」と言う。これは、売主は高く、買主は安く取引したいのが当たり前なので利益相反だと言われ、米国などの海外では法律で禁止されている。しかし日本では、大手不動産仲介会社の取引の半数は「両手」になっている。つまり、「両手」を狙って取り組んでいる。
これを批判して、片手取引を大々的に標榜する会社は出てきているが、実態は「売り・買いそれぞれのエージェント制」などと言葉を変えて両手取引を行っているに過ぎない。何が問題で、どう解決すればいいのか、ビッグデータからアプローチしてみよう。
不動産会社の自己都合だけ?
「両手仲介」という取引実態
ある仲介会社は、中古マンション査定で高い価格を提示し、「あなただけに売らせます」という契約を取り、他社には取引させないように囲い込む。その際に、「このマンションを買いたいお客さんがいます」といったチラシ広告を投函したりするが、これは物件仕入れのための常套句で、実際には存在しない場合がある。
しかし、その後は自社のサイトだけに査定価格で広告を出しておき、放置する。当然、価格が高いと問い合わせすら来ない期間が長く続く。業者がこれを意図的にやることを、業界用語で「干す」と言う。適正な相場価格付近なら、売り出してから3ヵ月以内で成約することくらい、彼らも重々承知している。
いつまでも売れないので、しびれを切らした売主に値下げを提案し、相場程度に落として、干している間に探していた自分が見つけてきた買い手をあてがう。こうして成約に至った場合、「両手」と言って売り手・買い手の双方から手数料3%+3%=6%を取る。
結局、仲介会社はこれをしたいのだ。彼らの論理構造は自分の売上を最大化することであり、歩合給を多く欲しい。だから、4500万円で他の人が見つけてきた買主に売って、3%分の135万円をもらうより、4000万円でも自分が見つけた買い手に買わせて3%+3%=6%の240万円が欲しい。こうした業者は売り手のために働いているわけではなく、自分の営業成績と歩合給という、自分都合のために働いていることになる。
世界で最も嫌われる3大業種は、「不動産屋、株屋、中古車屋」と言われることが多いが、どれも消費者との情報格差を利用して、自己都合で動く人が多いからだと思われる。