2016年にスクープを連発し、「ゲス不倫」で流行語大賞トップ10入りを果たした「週刊文春」編集部。その記者・編集者集団を率いる新谷学編集長が新著『「週刊文春」編集長の仕事術』(ダイヤモンド社)を著した。なぜ、文春が仕事術なのか。新谷編集長に“直撃”した。(週刊ダイヤモンド編集部 小島健志)
ジャーナリズム論では語れない
対人間の現場で得た仕事のすべ
──『「週刊文春」編集長の仕事術』を刊行されましたが、なぜ、「週刊文春」の編集長が「仕事術」をテーマにされたのでしょうか。週刊誌記者の仕事といえば「特殊性が高いのではないか」と一般のビジネスマンは感じると思います。
確かにわれわれの仕事には「特殊な仕事」というイメージがあるかもしれません。ですが、日々行っていることといえば「人に会い、情報を集め、交渉し、わかりやすく伝え、人の心を動かす」こと。これは、あらゆるビジネスに通じる部分があるのではないでしょうか。どんな仕事でも突き詰めていくと、人間対人間の関係で成り立っているからです。
違いがあるとすれば、日々「濃縮された究極の現場」を相手にしているところです。そもそも、取材を受ける側からすれば、「文春が来た」となれば、相当の緊張関係が生じます。その人の人生において最もドラマティックな一瞬である場合が多く、われわれはその断面を垣間見ることになるからです。
そのため、とてもデリケートな判断が一つ一つの局面で求められます。「ゴー」なのか、「ストップ」なのか。誰に先に話を聞き、何から聞き、どういう聞き方をするかなど、ちょっとしたミスも許されないような判断を下しています。
そもそも編集部は、ニュースを扱う「特集班」、ビジュアルを担当する「グラビア班」、小説やコラムなどの連載記事を担当する「セクション班」に分かれており、編集長込みで56人の陣容です。中でも特集班の場合、そういった究極の現場を同時に20以上相手にしている。ですから、他の人が経験しないような特殊な仕事をしているというよりも、短期間にかなり濃密で刺激的な経験をし続けているという感覚です。