現在、八丈島にあった宇喜多秀家屋敷跡付近では久福茶屋という今川焼き屋さんが営業をしている。運営は島の住人を中心にした八丈島久福会のメンバー。今川焼きは住民の方がボランティアで焼いていて、通常の味の他、八丈島の名産品であるアシタバの粉末を練り込んだものがある。

 このアシタバこそ、秀家の長寿の源ではないか。貝原益軒が『大和本草』に八丈島の薬草として書いているアシタバには、豊富なビタミンや食物繊維の他、アシタバカルコンというポリフェノールが含まれている。健康作用については不明瞭な部分が多いが、腫瘍細胞の増殖を抑制し、転移を抑えることが期待されている。もちろん食べ物に過度な期待をするのは禁物。バランスのよい食生活を送るための野菜の一つくらいの気持ちで、食事に加えたい。

 ところで八丈島の南原千畳岩海岸には、秀家と豪姫の夫婦の石像がある。秀家が流刑に処された後、夫婦は離ればなれのまま一生を終えたが、二人は石像となって再会し、今も岡山の方角を眺めている

参考資料/「アシタバについて」永田純一著(国立健康・栄養研究所)

(小説家・料理人 樋口直哉)