北朝鮮の核ミサイル開発を断念させるため、これまでは中国の主導による6者協議(日、米、中、ロに南北朝鮮)や、北朝鮮に対する経済制裁を行ってきた。
しかし、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)は力に頼って国を統治している人である。人民がいかに苦しもうと、お互いを監視させ、反抗の兆しがあると厳しく取り締まってきた。金正恩体制の中核幹部でさえ、反抗すれば即時粛清され、処刑された。察するに金正恩は、弱みを見せれば、自分がやられると考える人なのだ。そのような指導者が対話で関係改善の道を開くであろうか?少しでも譲歩すれば、弱さの証明と映ると考えるのだろう。
金正恩は今年の新年の辞で、「米国と追随勢力の核の脅威と恐喝が続く限り、戦争演習騒動をやめない限り、核戦力を中核とする自衛的な国防と先制攻撃能力を強化する」と述べている。北朝鮮の核は自衛ではなく、「先制攻撃」に使われかねない。
それを端的に示したのが、VXによる金正男(キム・ジョンナム)の暗殺だった。3月8日付の寄稿「北朝鮮VX使用が示唆『北朝鮮は本気で核を使いかねない』」でも書いた通り、化学兵器禁止条約で使用、生産、保有が禁止されている猛毒のVXを平気で使ってきたように、もはや常識が通じる相手ではない。
これまで、北朝鮮が核実験を行うたびに経済制裁を強化してきた。しかし、中国の非協力からその効果は限定的であった。
昨年1月6日の核実験後、北朝鮮からの石炭、チタン、レアアースなどの鉱物資源の輸入を禁止し、北朝鮮に出入りする全貨物の検査などの措置をとった。しかし、石炭の輸入禁止も民生用は除外されているため、これが抜け穴となった。