昨年、資源の巨額減損で創業以来初の最終赤字に沈んだ三井物産。2年前に史上最年少の54歳で社長に就任し、4万人超の連結社員を率いる安永竜夫社長は「人の三井」を強化するための意識改革を断行し、反転攻勢を期す。(「週刊ダイヤモンド」編集部 重石岳史)

やすなが・たつお/1960年愛媛県生まれ。83年東京大学工学部卒業後、三井物産に入社。2010年経営企画部長、13年機械・輸送システム本部長、15年4月より現職。 Photo by Masato Kato

──三井物産の社長に就任して2年が過ぎました。この間、特に注力したことは何でしょう。

 この2年間で徹底したのは「商社マンたるものは外へ出ろ」ということ。私自身、年約120日間出張しています。客との関係を維持拡大することがやはり商社として大事だし、仕事の種を掘り起こせるようになります。

 もう一つは「結果にこだわれ」ということ。新しいビジネスをつくるだけでなく育てられたか。計画通りの結果を会社にもたらしたか。ここにこだわっています。

 就任1年目は大変な減損損失で史上初の赤字決算となりましたが、2年目は連結純利益で3000億円は達成できそうな見込みです。

 これは資源価格の回復も一因ですが、より大きいのは非資源ビジネスで結果を出せているから。過去に投資した事業会社の収益性を底上げし、新たな投資についても想定通りの結果に仕上がるかを徹底する。これにより今、非資源の力強さを感じています。

──なぜ今、社長が率先して現場に出る必要があるのでしょう。

 昔は大手町の本社にも「売った、買った」の現場があり、われわれの世代はそこで鍛えられました。しかし今はどの総合商社もビジネスの軸足が関係会社に移っています。もちろん本社の人間が出向し、そこで関係会社の人と一緒に企業価値を高めてきましたが、必ずしもそれが徹底できていなかったのではないか。経営の現場はまさに関係会社にあり、その会社の成長のためにすべきことを徹底したい。