厚労省の検討会で、メタボやその予備軍の人々を対象に生活指導を個別に行う方針がまとめられた。この方針はある種の「疑念」を抱かせる

「メタボの受給者を健康指導」
厚労省が狙う医療費削減策の中身

 生活保護の家賃補助(住宅扶助)・暖房費(冬季加算)の実質引き下げが社保審・生活保護基準部会で議論されていた2014年後半、厚労省内で、生活保護受給者の健康管理に関する研究会が開催されていた。生活保護費の約半分を占める医療費(医療扶助)の「適正化」が目的である。「適正化」をカッコに入れたのは、生活保護においては、「適正化」という用語が「削減」「利用抑制」以外の何かを意味したことはないからだ。

 2015年度には、全国の95自治体で、生活保護の人々を対象とした「生活習慣病の重症化予防等の健康管理支援事業」が行われた。この結果を受け、2016年7月より「生活保護受給者の健康管理支援等に関する検討会」が開催されている。2017年4月7日に開催された第5回では、メタボリックシンドローム(以下「メタボ」)及びその予備軍の人々を対象に、病院受診・服薬管理・食事や運動などの生活指導を個別に行う方針がまとめられた。また、生活保護世帯の子どもに対する健康支援も提言されている。

 検討内容と、取りまとめられようとしている内容には、ツッコミたいところが数多くある。たとえば、通院治療を受けている患者に関しては、医療保険と生活保護で疾患内容の内訳に大きな差はない。ことさらに「生活保護かつメタボ」を問題視するのは、なぜだろうか(以下、図は厚労省検討会資料による)。

 入院患者に関しては、生活保護で突出して多いのは「精神・行動の障害」だ。生活保護に限らず日本の精神科入院患者は多く、「世界中の精神科入院患者の20%が日本にいる」という状況にあること、さらに5年以上の長期入院が多いことは、国際社会で長年にわたって批判されてきている。しかも、医療保険では11%に過ぎない精神科入院患者は、生活保護では約36%に達する。何が原因で何が結果なのかはともかく、「生活保護」という魔法がかかると、精神科入院は3倍以上になってしまうのだ。