日本には「生活保護を利用する人々は、“生活保護ではない人々”の感情を逆なでしてはならない」という不文律があるかのようだ。この不文律に照らせば、「生活保護で月に1回の焼肉なら許してもいいけど、パチンコなんて許せない」ということにもなるだろう。この種の「ゼイタク」「不相応」、あるいはパチンコそのものは、ケースワークの目にどう映っているのだろうか? 一人の若手ケースワーカーに、率直に語っていただいた。
モラル・金銭管理・生活が絡む
「生活保護でパチンコ」問題の背景
昨年末、2015年12月の報道を皮切りとして注目された、大分県別府市・中津市の「生活保護の利用開始時に『パチンコ店には立ち入らない』という誓約書を」「生活保護費でパチンコするなら、保護費減額などのペナルティを」は、2016年3月に行われた厚労省の指導によって、今後は実施されないこととなった。
先週2016年4月14日より熊本県を中心に続いている地震により、別府市も被害を受けている。4月16日午前1時25分、熊本県阿蘇・熊本を震度6強の地震が襲ったとき、別府市は震度6弱であった。人的被害・建造物被害・水道・電気・道路などのインフラ被害も、熊本県内に比べれば少ないとはいえ発生しており、まだ、全域で完全に復旧しているわけではない。有名な温泉街は18日には早くも営業を再開したとのことであるが、20日21時現在も、778人が避難所での生活を余儀なくされている(別府市による)。住んでいたアパートが「震度6弱」に耐えられなかった生活保護利用者も、少なくないのではないだろうか。住んでいたアパートが「震度6強」に耐えられなかった生活保護利用者も、少なくないのではないだろうか。このたびの地震で被災したすべての地域・すべての方々とともに、一日も早く別府市が復旧し、住民の方々の日常が取り戻されることを祈り願う。
さて今回は、前回に引き続き、「生活保護とパチンコ」について考えてみるため、東京都内の生活保護の現場で働く若手ケースワーカー・石原真(仮名)氏の、ケースワーク業務で出会う「生活保護とパチンコ」に関する語りを紹介する。
「生活保護でパチンコ」を非難する意見には、大きく分けて2つの要素が含まれている。1つ目は、パチンコという「生活保護にはふさわしくない」と考えられがちな行為を、まさに生活保護利用者が行っているという「モラル」上の問題。2つ目は、パチンコは安価に楽しめる娯楽ではないため、生活保護利用者がパチンコを楽しもうとすれば生活が圧迫されるという問題だ。この他に「勝ったからといって景品を換金したら、換金することは法的にグレーゾーン」「勝って収入申告しないと不正受給」など数多くの問題があるけれども、やはり大きな問題は「生活保護の身でありながらパチンコ?」と「生活保護費をパチンコに使ってしまうなんて!」の2つであろう。
「『ゼイタク行動』『(立場に)不相応』という問題と、『次の保護費支給日よりも前に保護費を使いきってしまったので、生活できない』という問題ですね。どちらも日常の業務で、しばしば出合う事例です。パチンコには『ギャンブル依存症』という問題が含まれている場合もありますが、そういう方に自分が対応したことは、今のところ、まだありません」(石原氏)
では、「ゼイタク」「不相応」について、石原氏と同僚のケースワーカーたちは、どのように対応しているのだろうか?