つまり、1989年のベルリンの壁崩壊以降、国際社会においては、ロシアも含め、自由主義経済、資本主義をベースにした民主主義が“正義”だった。

 COP21で「パリ協定」が採択されるなど世界中が1つになって地球環境を考えていくような取り組みも進んでいった一方で、経済のグローバル化が進む中、マネーゲームが横行する金融資本主義が優位になり、富める者と富めない者を生んでしまった。

 また、ネット社会の発展により、中近東では自由、公正などを訴え、独裁体制を打倒する「アラブの春」など民主化運動が起こったが、混迷する状況の中、一部の過激な者たちはISのような集団を生み、その結果、シリアを中心とする多くの難民が欧州に渡って、それがイギリスのEU離脱や、欧州の一部の国が保護主義的な考えに傾く契機となってしまった。

 アメリカでも同様に、大変な格差社会で最も不満をため込む状況に陥っていた中下層階級の白人の鬱憤が爆発した。

 こうしたことは、国際社会の大きな流れの中では、一時的に「後ずさり」したという状態だと思っている。

 アメリカで今起こっていることは、白人中間層がハッピーだった時代への「ノスタルジー」であって、新たな方向性が出てきたわけではない。「ノスタルジー」は長く続くわけはなく、これまで世界の大きな流れは「グローバル化」「ダイバーシティ」で来ていたわけだから、一定の期間が過ぎれば終わればその流れにまた戻るだろう。

 だいたい、政治はともかく、経済のグローバル化は自然科学的に考えても拡散していくものだ。個別ではやっていられないからこそ、ここまでグローバル化が進展してきた。

 今後トランプ大統領が二国間協定を推し進めていっても、それが上手くいけば次の段階としては貿易連合が出てくるはずだから、今そこをあまり心配する必要はないのではないか。

――日本企業はどのような影響を受けると考えますか。

 日本では金融政策でマイナス金利まで導入しても、想定したほど円は安くならなかった。それが、トランプ大統領誕生後、財政出動など政権の経済政策への期待であっという間に円安が進んだ。それくらい、日本というのは経済的には「大海に浮かぶ小舟」ということ。

 だから、アメリカ経済が好調であれば、輸出や為替を通じて日本経済にも良い影響があるだろう。今はいくらトランプ大統領が口先介入したとしても、トレンドとしては円高には行かないと思う。