先日ワシントンのFRB本部、IMFや世界銀行のエコノミストと面談してきたが、そこで気がついたのは、原油価格の動きをかなり重視しており、物価の基本として見ていることだった。原油価格を重要なインフレの先行指標としているのである。もちろん、FRBは雇用を特に重視し、失業率よりも賃金上昇率を重視していたが。
原油価格はWTI(West Texas Intermediate)という指標で見ることが多い。西テキサスは、米国映画でたまに見かける採掘機によって、近代的な原油採掘を始めた地域である(Intermediateとは中流の意味)。今はシカゴマーカンタイル取引所(CME)に買収されたニューヨーク・マーカンタイル取引所 (NYMEX)で取引されている。
筆者はシカゴ駐在時より先物も専門の一つとしていたが、忘れもしないメガバンクの企画部経済調査室に勤務していた2008年7月11日、原油先物が1バレル(約159リットル)=147.27ドルまで上昇した。その時にはエコノミストのみならず、一般の方々まで皆、200ドルまで上昇するものと考えて、省エネが推進された。しかし、9月15日にリーマンショックが発生し下落。その後、WTIは昨年1月20日に最高値以降の最安値26.55ドルを記録した。最高値の2割以下に下落するなどと、誰が予想できたであろうか。
資源価格において原油はその中心的な存在である。エコノミストになりたてのころ、原油価格が上昇するとブラジルの通貨や株価が上昇した。ブラジルは原油を産出しないので、なぜなのかよく分からなかったが、ブラジルでは鉄鉱石等の鉱物が採れる。鉱物などの資源価格は、原油価格にほぼ連動しているのである。確かに、原油だけでは製造業は成り立たない。
時は経ち、最高値を更新していたころには実現するとは思わなかったことが起きた。シェールオイルの採掘開始である。頁岩(Shale)と呼ばれる泥岩の層に含まれている原油のことだが、強い水圧をかけることで採掘が可能になった。主として米国の北部と南部の山岳地帯で産出される。筆者の学生時代には考えられなかったことだが、今や米国が原油生産量1位である(2位はサウジアラビア)。さらにトランプ政権になって生産は増加する。オバマは環境を重視していたが、大統領がトランプになり、より環境負荷の高い掘削方式が許可された。環境よりも開発というわけである。