曲がり角のEU統合にも影響
ロシア、トルコとの関係が情勢を複雑に

 本年3月に行われたオランダの選挙では、極右自由党が第1党になることが予想されていたが、結果的には与党自由民主党が第1党の地位を保ち、反グローバリゼ―ションとポピュリズムの勢いが少し止まったという評価もされている。しかしEUを支えるフランスの大統領選挙のインパクトは圧倒的に大きい。例えばEU予算においては総額の17%とドイツの22%に次いで2位、欧州議会の議席配分においてもドイツの96名に次いで74名であり、元々欧州統合は独仏の和解のプロセスとして始まったものであるが、今日、EUの屋台骨を支えるのはこの2ヵ国なのである。

 このようなEUが大きな曲がり角にあるときにさらに状況を複雑にしているのはEUの外縁にある大国ロシア及び新興国として力をつけてきているトルコとの関係である。

 EUはロシアのクリミア併合・ウクライナ問題との関係で経済制裁を科しており、ロシアは対抗措置としてEUからの農産物輸入に制限を科している。農業大国フランスはこのロシアの対抗措置で大きな経済的影響を受けており、ル・ペンは対ロ制裁解除をはじめロシアとの関係改善を主張している。ロシアは米国の大統領選挙で行ったようにフランスの大統領選挙においてもロシアにとって不都合なマクロン候補の不利になるような情報戦を展開していると伝えられる。このようなロシアの動きは大統領選後の仏の対露政策に大きな影響を与えざるを得ない。

 トルコでは大統領権限を大幅に強化する憲法改正が国民投票で成立したとされており、エルドアン大統領に権力集中する結果、エルドアン大統領の強権的統治が危惧される事態となっている。トルコはNATOの一員であるとともにEU加盟の候補国であり、またシリア難民問題の対策を講じていく上でもEUはトルコの協力を必要とする。トルコが民主化から遠のいていく事はEUにとって好ましいことではない。ロシアやトルコとの関係を考えていく上で独仏というEUの2大大国の強い結束を必要とするが、大統領選挙はそのような結束に大きな影響を与える。

歴史の分水嶺となる選挙
国家の復権か、グローバル化か

 思えば近代の世界は1760年代の英国の産業革命に始まった。そして米国が独立(1776年)し、フランス革命(1789年)は前近代的な旧体制を打破する市民革命であったと言われる。果たして今日Brexitに始まりトランプ大統領の誕生を経てフランス大統領選挙に至るプロセスは二百数十年前のように世界の歴史を大きく変えるうねりとなるのだろうか。再び国家意識の強い閉鎖的な国際社会へと歴史を逆行していくのだろうか。それともグローバリゼーションの大きな流れを維持しつつ、開かれた社会を目指す方向に踏みとどまることができるのだろうか。フランスの大統領選挙は大きな分水嶺となるような気がする。

(日本総合研究所国際戦略研究所理事長 田中 均)