北朝鮮vs米国の対立続くシナリオ
米国に接近せざるを得ない中国

 第3のシナリオは、今後も対立が続く展開だ。米国は軍事力の行使を示唆してはいるが、本当に攻撃を行うかどうか、実際の判断は口で言うほど容易なことではないはずだ。 専門家の間でも、「かなり慎重な判断が必要」との見方は多い。中国もそれを理解しており、実際には、北朝鮮に無視されながらも対話による問題解決を目指している。

 動くに動きづらい米中の立場を見越して北朝鮮は核開発を続け、制裁の解除などを米国から引き出そうとするだろう。この場合、米国は警告を無視したことに立腹し、さらに強硬な姿勢をとるはずだ。

 金正恩の独裁体制と核開発は表裏一体だ。核開発が続く限り、米国は北朝鮮のICBM(大陸間弾道ミサイル)攻撃という脅威に晒され、日本や韓国でも安全保障上のリスクは上昇するだろう。その場合、先行きに関する懸念の上昇は避けられない。

 このシナリオは先行きへの不透明感を上昇させるだけでなく、多くの人々の神経をすり減らすだろう。

 米朝の対立は、中国にも無視できない影響を与えるだろう。北朝鮮が中国の意向に従わない以上、中国は米国に接近せざるを得ないと考えられる。それは、中国が北朝鮮という緩衝国を失うことに等しい。また、米国への接近は、“共産党政権が北朝鮮を制御できない”との国内世論につながり、先行きの政治・経済の不透明感が上昇する恐れもある。

 結局のところ、北朝鮮の暴走を食い止めるには、中国の圧力が不可欠だ。北朝鮮の輸出入の6割程度は中国とのものだ。中国が今以上に石炭の輸入などを削減すれば、北朝鮮の経済活動は成り立たなくなり、金正恩体制の政権基盤も危うくなるだろう。中国が北朝鮮に対する圧力をさらに強化すれば、それなりの影響力を発揮できる可能性が高い。

 こうした展開を念頭において、米国は北朝鮮に強硬な姿勢をとっているとの見方もある。米国の思惑通りに、中国が北朝鮮に圧力をかけるなら、朝鮮半島情勢への不安は低下する可能性がある。それは現時点で最も現実的なシナリオの一つと考えられる。中国が北朝鮮をコントロールすることができれば、地政学的リスクに起因する先行きへの不安心理は落ち着く可能性がある。それができない場合、朝鮮半島情勢への懸念の上昇から、世界経済が厳しい状況に直面する恐れがあることは覚悟しておくべきだろう。

(法政大学大学院教授 真壁昭夫)