「暁」とはいつのことか?

 でもこの句でもっとも問題になるのは「暁」です。暁の一般的なイメージは「輝く朝焼け」かもしれませんが、本来は「夜明け」のことではありません。もっとずっと手前です。

 夜中を過ぎ、未明のまだ暗いうちが暁であり、東雲(シノノメ)、曙(アケボノ)と続き、ようやく日の出となります。

 だとすると、「春眠暁を覚えず」とは一体どういう意味なのでしょう?

 これまでのことを総合すれば、「冬だと寒くて起きてしまうかもしれないが、5月初旬ともなれば暖かくて、日の出の2時間前でもぐっすり寝ている」となります。まあ、そりゃあそうでしょう。そんな朝早く(というか深夜3時頃)に起きるわけもありませんし、気温も10℃以上。お布団でぬくぬくしていて当然です。

 でも当時、それは当然ではありませんでした。役人たちの宮城への出仕時間が午前3時だったからです。役人は春、2時起きで出仕の準備をしなくてはなりませんでした。

『春暁』は孟浩然の自由人生活を謳った詩

 孟浩然は優秀でしたが、国家公務員試験である科挙(かきょ)に合格できず、役人にはなれませんでした。詩歌の才能が認められて重用はされましたが、公務員ではなく自由人だったのです。だから「暁」なんて関係ありません。