一軒家やマンションの一室を複数人で共有して暮らす「シェアハウス」。リアリティ番組『テラスハウス』(フジテレビ/2012年~)の影響もあり、「シェアハウス=オシャレ物件」というイメージを抱いている人も多いだろう。しかし実際には、経済的な理由からやむを得ず選択し、その生活から抜け出せない“シェアハウス難民”もいるという。困窮した若者が集うシェアハウスの実態と、その背景とは(取材・文/松原麻依[清談社])

都内在住で手取り13万円の女性
アパートへの引っ越しは「夢のまた夢」

「本当はアパートに引っ越したいけど、初期費用が払えないからシェアハウスに住み続けるしかない」と語るのは、都内のデザイン会社に勤務するAさん(27歳・女性)。

若いうちは、シェアハウスで和気あいあいと楽しく暮らせていいという意見もあるが、アパートを借りようにもお金がなくてシェアハウスを点々とする若者も大勢いる

 Aさんの月々の手取りは13万円程度。そこから、シェアハウスの家賃光熱費、奨学金の返済、通信費などを支払うと毎月3万円しか手元に残らない。これでは引っ越し資金など貯められるはずもない。

「3年前に会社の近くのアパートに引っ越したのですが、そこの大家さんが合鍵を使って勝手に部屋に侵入するような人だったので、身の危険を感じ退去しました。最初の引っ越しで貯金を使い果たしてしまったため、初期費用ゼロのシェアハウスに入居することにしたんです」(Aさん、以下同)

 逃げるようにアパートを引き払ったAさん。その後、半年~1年スパンでシェアハウスを転々とすることになった。

「最初は高円寺の古い一軒家を改築したシェアハウスに入居しましたが、物件の取り壊しが決まり退去させられました。次に住んだのが、都心部にある初期費用ゼロの物件。家賃光熱費合わせて5万円ポッキリでしたが、なぜか私以外の住居者が全員中国人でした。しかも、壁紙がめくれていたので何気なく剥がしてみると、壁一面カビまみれだったんです。その後、せきが止まらなくなったので、再度引っ越す羽目になりました」(同)

 現在は、郊外のシェアハウスに住んでいるというAさん。稀に住人同士のトラブルや喧嘩に巻き込まれることはあるが、今の暮らしには概ね満足しているという。ただ、「三十路までには普通のアパート暮らしに戻りたい」というのが本音だ。

「もっとましな待遇の会社に転職して、アパートの初期費用を貯めるという手もありますが、現時点で貯金がないので会社を辞めるわけにもいきません。働きながら転職活動しようにも、月々の残業が200時間を超えている状況なので、その余力はなさそうです。金欠で時間もない、転職もできないので先の見通しも立たず、シェアハウスからも抜け出せない…。四面楚歌です」(同)