東日本大震災発生から2ヵ月余りが経過し、被災者の生活正常化が喫緊の課題となっているが、その際に最重要課題の一つとして浮上してくるのが雇用の確保である。本稿では、多面にわたる東日本大震災の雇用への影響を整理したうえで、壊滅的な被害を受けた被災地での対応を中心に、雇用再生に向けた課題について提言する。

多面的な影響ルート

 東日本大震災は、巨大地震に大津波、原発事故が重なった「複合大災害」となったため、その雇用・産業への影響ルートも多面に及ぶ。

①被災地における直接的影響……被災地では広範囲に産業基盤が破壊され、一瞬にして多くの雇用の受け皿が失われた。避難者数などから推定して、被災により事業の再開のめどが立たない自営や事業主も含めれば、さしあたり約14~20万人が職を失ったと試算される(図表1)。

②サプライチェーン中断による影響……被災地には電気機械や自動車部品、化学産業等の集積があり、少なからぬ工場が深刻な打撃を受けた。今回の震災によりサプライチェーンのあちこちが痛んだ形であり、全体の修復には半年程度かかる見通しである。

 ちなみに、2011年度上期の乗用車生産が震災前に比べて8割水準にとどまる場合、サプライチェーンにかかわる企業全体の生産が停滞することで、12万人の雇用が失われる可能性がある。6割水準で低迷すれば、25万人分の雇用調整圧力が生まれると試算される(図表2)。