いまメディアで話題の「マレーシア大富豪」をご存じだろうか? お名前は小西史彦さん。24歳のときに、無一文で日本を飛び出し、一代で、上場企業を含む約50社の一大企業グループを築き上げた人物。マレーシア国王から民間人として最高位の称号「タンスリ」を授けられた、国民的VIPである。このたび、小西さんがこれまでの人生で培ってきた「最強の人生訓」をまとめた書籍『マレーシア大富豪の教え』が刊行された。本連載では、「お金」「仕事」「信頼」「交渉」「人脈」「幸運」など、100%実話に基づく「最強の人生訓」の一部をご紹介する。

「謙虚」でなければフェアにはなれない

 私は「損得」よりも「フェアであること」を判断基準として生きて来ました(連載第10回参照)。これが、持続的な成功をつかむ必須条件だと考えているからです。しかも、フェアである限り、多少の損害を被っても誇りが失われることはない。清々しく生きるためには、「フェアであること」はきわめて重要なことなのです。

 ただし、「フェアネス」は難しいものです。時代、地域、人によってフェアネスの基準は異なります。ある人にとってフェアであることはが、別の人にとってはアンフェアであることもあります。人間は誰しも、「自分の立場」からモノゴトを正当化しようとするものです。であれば、自らのフェアネスを妄信するのは、大きなリスクを抱えていると考えるべきでしょう。

 だから、私は、フェアネスの最低条件として、多くの人が納得するだけの論理性と客観性がなければならないと考えています。そのため、アンフェアな出来事に遭遇したときにも、直情的に反応するのではなく、自分なりによく考えてから、しかるべきアクションを起こすように心がけてきました。

 とはいえ、この世に完全無欠な人間などいません。人間とはどこまでいっても主観的な存在で、どんなに客観的になろうとしてもその軛(くびき)から逃れることはできない。自分にとってはフェアであることが、相手にとってはアンフェアである可能性は捨てきれない。これを認識することこそが、謙虚であることだと私は思います。そして、フェアネスを保つためには、この謙虚さこそが不可欠だと自分に言い聞かせているのです。

 だから、私は、「相手を理解し、尊重し、助ける」ことをモットーにしてきました。
 文化も考え方も違う異国にたったひとりで飛び込んでいったために、この姿勢を徹底しなければ生きていくことができなかった。異なる価値観をもつ人たちと一緒に仕事をしていくことができなかったのです。