ITに不慣れな理由は
使わなくとも便利な社会だから

 日本人の「ダメさ加減」を示す国際比較データがしばしばニュースに登場する。当っている場合も多いが、警鐘を打ち鳴らすことが仕事のマスコミや、有識者の早とちりによる勘違いであることも多い。今回は、そうした勘違いを三つのケースに分け、生じるゆえんをデータを使って明らかにしたい。

 2013年の10月、OECDが11年度に世界24ヵ国・地域で実施した「国際成人力調査(PIAAC調査)」の結果が発表された。この調査は、「子ども」の国際学力テストであるPISA調査の大人版。「成人」のスキルテストを内容とするものである。

 テストは、「読解力」「数的思考力」「IT活用力」の3科目で実施されたが、報道は各社とも、「読解力」と「数的思考力」の2科目で世界一だったことより、「IT活用力」(ITを活用した問題解決能力)で世界10位と振るわなかった点を問題視し、原因であるIT学習機会の未整備の解消に取り組むべきだと論じた(例えば毎日新聞社説、同年10月10日付)。

 IT活用力のテストは、「指定された条件を満たす商品をインターネットで購入する」、あるいは「表計算ソフトで作成された名簿を用いて、条件を満たす人のリストを作成した上で、そのリストをメールで送信する」といった実技試験だった。