前回の記事「なぜFacebookのファンは増えないのか」では、ソーシャルメディア時代の新しい集客のルールについて書いた。Facebookを始めとするソーシャルメディアでは、売り込みやセールスは嫌われる。新たな広告宣伝の場ができたとばかりにセールスメッセージばかりを発していると逆効果になりかねないのである。

では、ソーシャルメディアで集客するには何をすれば良いのだろうか。これまでのやり方が通用しないのであれば、新しいやり方は何なのか。今回は、その大きなヒントになる事例を紹介したい。

前年比350%売上アップの秘密

 いま、海外のソーシャルメディア関連本やセミナーなどで、新しいマーケティングの成功事例として頻繁に取り上げられている企業がある。米マサチューセッツのベンチャー企業ハブスポット社 http://www.hubspot.com/ である。同社は、2006年に創業して以来、中小企業向けのマーケティングツールをネットベースで販売している。社員は現在200名を超え、2010年の年商は前年比350%という急成長を遂げている。

ハブスポット社CEO ブライアン・ハリガン氏

 同社の集客のやりかたはきわめてシンプル。「お客さんに役立つ無料コンテンツを大量に提供する」、たったそれだけだ。ブログ、インタビュー動画、Eブック、ウェブセミナーなど、毎日たくさんのコンテンツを、まるで工場のように制作、発信している。

 たとえば、ある月の例でいうと、ブログ記事は1日4~6本、Twitterは1日6~7回、YouTube動画は月6本、ウェブセミナー5本、Eブック3本、動画ポッドキャスト5本。タイトルは以下のようなものだ。

• 「Eメールマーケティング12の間違い」(ウェブセミナー)
• 「Googleツールの最大活用法」(ウェブセミナー)
• 「アクセス解析の科学」(スライド)
• 「お客さんをエバンジェリストに変える方法」(Eブック)
• 「QRコードについて、すべてのマーケターが知っておくべきこと」(ブログ)

 いずれのコンテンツも質が高く、マーケティングに関心のある経営者や担当者に役立つ情報ばかりだ。

 ハブスポットはマスメディアの広告は行っていない。にもかかわらず、コンテンツを作り続けることだけで毎月25000件もリード獲得をしている。そして面白いことに、コンテンツの中に、セールス要素はほとんど入っていない。

 同社でマーケティングの担当者はこう言う。「ほとんどの会社では、コンテンツにセールス要素を入れすぎていると思います。コンテンツが3リットルあったとしたら、セールスはほんの1滴か2滴でいいんです

 セールス要素を入れずに無料コンテンツだけで売上を伸ばす。では、具体的にどのように売上につなげていくのだろうか。