とはいえ、16年3月期の「伊藤忠独り勝ち」という状況は今回、大きく様変わりした。

 資源価格の高騰で競合各社の業績も急回復。16年3月期は1494億円の最終赤字に陥った三菱商事の連結純利益は4403億円となり、首位の座を奪い返した。18年3月期も首位を維持する見通しだ。三井物産も同じく、834億円の最終赤字から一転、今回は3061億円と、伊藤忠に迫る大幅改善となり、「全ての指標が計画を大幅に上回り、当社の力強さを示す結果となった」と安永竜夫社長は話す。

利益競争の過熱に危機感

 こうした中、伊藤忠では従来の利益ナンバーワンへの強いこだわりがトーンダウンしつつある。

 岡藤社長は「損益計算書(PL)上の数値競争が過熱しており、このままでは商社業界全体がマーケットから信頼を失う。(18年4月から始まる)次の中期経営計画では、単なるPLの数値で競争するのはやめなあかん」として、どういう会社を目指すかを検討するタスクフォースを設立する。

「社員が誇りを持てる、自分の子どもを入社させたいと思う、仕事も家族の生活も大事にする等、誰もが憧れる会社を目指す」。岡藤社長が目指す会社の姿は、まだ漠然としている。これをどう数値化し新指標として中計に落とし込むのか、定かではない。

 単なる数値競争はやめるといっても、将来の成長期待を高めることなくして企業価値の向上はない。

 その意味でも、まずは今期中にCITICやユニー・ファミリーマートホールディングスなどとの事業連携による成長戦略の道筋をつけることが、新指標導入のための最大の課題といえそうだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 松本裕樹)