本来ならくっつくはずのない、硬さの異なる樹脂同士や、金属と樹脂を接着させる――。こんな従来の常識を覆すような技術を発想し続けているのが、今回取り上げる大成プラスだ。創業者である成富正徳会長は技術革新を続け、現在、車や家庭用ゲーム機、携帯電話、パソコンなど様々な製品に利用されている。国内外で権利化されている特許は80件以上、出願中のものは約300件超という同社は、創業時から工場を持たないファブレス経営を続け、設備を持つメーカーが考えつかなかった製造方法を発案することで現在の地位を築いてきた。そんな同社も2009年には中国工場を持ち、生産を開始。中小企業ながら革新的な技術を持つ同社が、偽造や模倣に悩まされる中国市場でどう技術を守っているのだろうか。成富会長にその秘訣を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 林恭子)
「金属」と「樹脂」の接着技術を開発!
保守的な日本では“我慢”が必要だった
――現在、特許出願数は300件と様々な発想で技術革新を起こしている御社。実際、どのような技術を お持ちなのか教えていただけますか。
1982年の創業後すぐ、凸凹のない「フラットなはんこ」の製造を始めました。非常に精度の高いフィルター(多孔質シート)に穴を開け、インクの出るところと出ないところを任意に作ることで実現しています。文字の場合はとても安い金型で済み、写真をスタンプにする場合は金型が必要ないため、コストは普通のスタンプの3分の1から4分の1と、圧倒的に安く作ることができます。
ですが、最初はなかなか取引先から相手にされませんでした。従来品と比較はしてもらえましたが、頭の中を従来の技術が占めているため、なかなか新しい技術に置き換えてもらえなかったのです。特に日本人は保守的ですから、「いいかもしれないな」と心を動かしてもらうまでに半年ほどかかりました。それでもしばらくすると、品質とコスト面の優位を理解して、採用してくれる会社が決まり、それをきっかけに徐々に受け入れてくれる企業が増えていきました。それまで2年近くかかりましたね。現在では、文具・おもちゃ用スタンプの多くがこの仕様になっています。
この経験から私は、開発した商品を展開させるには、“我慢”が必要だと学習しました。この後、硬いプラスチック(硬質樹脂)とやわらかいプラスチック(軟質樹脂)の直接接着技術を開発するのですが、その際も接合といえば「ねじで留める」「接着剤を使用する」という既成概念があるため、ダイレクトに接合することのメリットを見出していただくまでにとても時間がかかりました。今では家庭用ゲーム機のコントローラー部分にも使われています。