◆良かれと思った傾聴が“溝”を深めるワケ
部下が動かない、Z世代との距離感がつかめない……そんな悩みを解決するのが、ソフトバンクで「汐留の母」と呼ばれた澤田清恵著『伝え方ひとつで部下が動き出す 上司の「コミュ力」大全』(ダイヤモンド社)だ。生身のリーダーに求められる最強の武器は生成AIには代替できない「コミュ力(共感力)」。単なる同情ではなく、相手の視点を論理的に理解する「認知的共感」の技術を体系化した、悩める上司たちの「読むサプリ」だ。呼吸を合わせる基本から、自身の無意識を言語化する応用、さらには「飲み会の失敗事例」や「エース部下の退職」といった実例に基づく「しくじり」分析まで網羅。表面的なテクニックではなく、心・技・体を整え、信頼で組織を動かすための実践的ノウハウが詰まった決定版!
※本稿は、『伝え方ひとつで部下が動き出す 上司の「コミュ力」大全』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。
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「共感しているつもり」の上司が
部下に見透かされているワケ
「1on1ミーティングをやっても、いまひとつ本音が引き出せない」
そんな悩みを抱える管理職の方々へ、私は講演の場でよくこんな問いかけをします。
この質問に対し、会場にいる多くのリーダーたちは自信を持って、「できていると思います」「傾聴には自信があります」と手を挙げます。しかし、現場の実態を見てきた私の感覚としては、本当に深いレベルで共感できている人は、手を挙げた方のうち「せいぜい2割程度」というのが現実です。
では、残りの8割の方は何をしているのでしょうか? 彼らは「共感」をしているのではなく、単なる「反応(リアクション)」をしているに過ぎないのです。
「オウム返し」=「共感」という大きな勘違い
「部下が『コーヒーを飲んでいる』という事実」に対して、「コーヒー好きなんだね」と声をかける。「部下が『プレゼンが苦手なんです』と言った言葉」に対して、「そうか、プレゼン苦手なんだね」とそのまま返す。
もちろん、これらはコミュニケーションの基本テクニックである「バックトラッキング(オウム返し)」の一種ではあります。しかし、多くの管理職は、このテクニックを使っただけで「自分は相手に寄り添った」「共感を示した」と満足してしまっているのです。
残念ながら、これだけでは部下の心は動きません。それどころか、敏感な部下たちはこう感じています。
「僕の感情ではなく、言葉尻を拾っているだけじゃないか」
上司が「共感しているつもり」で満足している間に、部下は「共感しているフリをしている上司」だと冷ややかに見抜いている――これが、多くの職場で起きている「信頼のズレ」の正体です。
表面的なスキルよりも大切なこと
なぜ、このようなすれ違いが起きるのでしょうか? それは、上司の視点が「チャンクダウン(具体化)」された細かい事象にばかり向いているからです。
「コーヒー」「プレゼン資料」「遅刻」といった目の前の現象や言葉だけを拾って反応しても、それは表面的な会話のラリーに過ぎません。本当の共感とは、その言葉の奥にある「部下の感情」や「背景にある価値観」に触めることです。
「プレゼンが苦手と言うのは、失敗したくないという責任感の裏返しなのか?」
そこまで想像力を働かせて初めて、相手に響く言葉が生まります。「オウム返しをしておけば大丈夫」という安易なスキルの過信は、かえって部下との溝を深めるリスクがあることを、私たちはまず自覚する必要があります。
※本稿は、『伝え方ひとつで部下が動き出す 上司の「コミュ力」大全』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。









