なぜ中川政七商店が
ポーター賞を取ることができたのか?
中川政七
東洋経済新報社
254ページ
1600円(税別)
「日本の観光をヤバくする」 というのが星野リゾートのミッションだと知っているビジネスマンは少なくないだろう。観光カリスマである星野佳路社長率いる星野リゾートは、リゾート施設運営におけるイノベーションと独自性のある戦略が評価され、2014年度のポーター賞を受賞している。
本書『日本の工芸を元気にする!』で取り上げられる中川政七商店は、工芸分野における星野リゾートとも呼ぶべきユニークな会社である。本書の著者である13代目中川政七社長率いる同社は、工芸品をベースとした生活雑貨の企画・製造卸・小売業を営むと同時に、工芸による地方創生実現のため、「日本の工芸を元気にする!」をミッションとして、今や絶滅の危機に瀕している日本の伝統工芸を盛り立てるべく様々な取り組みを行なっている「老舗ベンチャー」であり、星野リゾートの翌年にポーター賞を受賞している。
そして、やはりと言うべきか、著者の最初の著書『奈良の小さな会社が表参道ヒルズに店を出すまでの道のり。』では、星野社長が「ニッポンの老舗、創業300年の歴史から、企業の持続性の条件を学ぶことができる。」という帯推薦文を寄せている。
中川政七商店がポーター賞を取ることができたのは、工芸業界で初めて商品開発・製造・流通・小売までを全て自社で運営するSPA(speciality store retailer of private label apparel:製造小売)モデルを構築し、「遊 中川」「中川政七商店」「日本市」「粋更kisara」などの自社ブランドを確立し、全国に約50の直営店を展開していること、工芸分野の経営コンサルティング事業を開始し、現代的マネジメントとブランディングで、日本各地の伝統産業の経営再建に尽力していることなど様々な要因があり、どれを取ってみても非常にユニークな試みである。