高齢の親を独力で支えなければならないビジネスパーソンが次々に職場を去っていく。このまま晩婚化、非婚化が進めば、介護退職者は今後さらに増えるにちがいない。

 実際、親元で暮らす未婚者は増加傾向にある。2005年の国勢調査によると配偶者のいない子どもと高齢者の世帯の数は20.6%。5世帯に1世帯の割合だ。とくに埼玉、千葉、東京、神奈川、大阪など、職場に通える大都市近郊で多い。

「学卒後もなお親と同居し、基礎的生活条件を親に依存している未婚者」が「パラサイト・シングル」と呼ばれ始めたのは1997年頃だ。おかげで若者バッシングの風潮が煽られる結果となってしまったが、当時、なかなか職に恵まれず、自活できるだけの収入がない未婚者は相当数いたはずである。正社員になれなかったため、結婚しづらくなってしまった人もいた。「若者不遇の時代」「世代間格差の時代」の始まりが、ちょうどこの頃だったのかもしれない。

 だが、それから10年余りが経ち、親も子もともに年をとった。子どもは職場でそれなりの責任を持つ年齢に達しているが、親の方は心身ともに弱くなってくる時期だ。

 怖いのは、両親が相次いで倒れる「同時多発介護」である。

 高齢化した親は、連れ合いが倒れたことで心労や疲労が重なると、自分も寝込んだり、認知症を発症してしまったり、ということがよくある。そうなれば身近な息子、娘がダブル介護せざるを得なくなる。

 就職氷河期で職探しに苦しんだロスジェネ世代は、今度は「介護失業」の危機に瀕しているのだ。

介護で結婚が遠のく――
「恩返し介護」中の息子たちの悲鳴

 もちろんこうした事情は別居している子どもも同じだが、親に家事などの面倒を見てもらっていた場合、心身の負担はいっぺんに増えることになる。

 パートナーのいない同居シングルの場合、母親が主婦役を引き受けてくれたことで、仕事に専念できていた面もあるだろう。ところが親が倒れれば、突然「仕事」「介護」「家事」の3つが同時に降りかかってくる。

 また、同居シングルは愚痴を言えるパートナーがいないことから、精神的に孤立しやすい。とくに男性は、周囲にも介護していることをひた隠しにしていたりする。「介護しているなどと知られたらキャリアに響く」と考える人も少なくないからだ。