その一方、介護しているために結婚がしづらくなってしまうというジレンマも生じている。

「もう一つの問題は、親子間で密着しすぎる『カプセル状態』に陥りやすいことですね」と中島さん。

「親子は嫁姑などに比べて精神的に近い存在。娘の場合はなおのこと、『お母さんは私がいなきゃダメだから……』などと思いこみがちです。看病することに自分の存在意義を見出してしまうんですね。『施設に預けたら』『デイサービスを使ってもっと楽に介護をしたら』などと周りが助言しても、そばを離れるわけにはいかない、と耳を貸そうとしません。挙句、心身ともに疲れ果ててしまうのです」

 母親と一心同体化してしまう「一卵性親子」の娘は、子どもの頃から母親の期待に応えようと頑張ってきた。このため、母親が要介護状態になっても「いい娘」を演じ続け、過剰に頑張ってしまうのだそうだ。

 一方、息子にありがちなのが「恩返し介護」。生意気盛りの反抗期の頃も、受験や就職で心配をかけたときも、つねに温かい愛情を注いでくれた親。その親に今度は自分がお返しをしてあげたい、とじつに熱心に世話をする息子が多い。

「もちろん素晴らしいことなのですが、知らないうちにストレスを溜めこんでいることも。高齢者虐待事件の加害者のトップは実の息子ですが、聞くと『ふだんは優しい息子さんだった』ということが多いそうです」

「介護失業」で
生活保護受給者になる人々も

 そして、シングル介護の最大の壁が「仕事との両立」である。

 ほかに家族がいればいいのだが、2人暮らしの場合、仕事に出ている間、親が日中独居になってしまう。といって、そうそう気軽に介護休暇を取れないのが実情のようだ。

 育児・介護休業法では、対象家族1人につき、要介護状態に至ったごとに1回、最大93日間の休暇が取得できることになっている。また、昨年から施行された改正法により、1人の要介護者につき年に5日(2人の場合は10日)の短期休暇も取れるようになった。

 だが、実際に介護休暇を活用する人はほんのわずか。労働政策研究・研究機構の調査によると、取得者率はじつに1.5%だ。「そもそも職場に介護休業制度がなかった」「ほかに介護休暇を取った人がいなかったので、情報がなかった」などの理由が目立っている。