過去最高の売上高と最終利益を確保した不動産大手、三菱地所の投資が拡大している。新中期経営計画で示されたその矛先は、得意の丸の内ではなく、苦手とされる“丸の外”だ。(「週刊ダイヤモンド」編集部 宮原啓彰)

 不動産大手3社の2017年3月期決算が、そろい踏みで過去最高の最終利益となった。

 中でも三菱地所は、売上高で対前期比11.5ポイント増、営業利益で同15.8ポイント増、純利益に至っては同23.1ポイントの大幅増と、それぞれ業界最大手の三井不動産、業界3位の住友不動産を上回る伸長となった(図(1))。

 マンションの1戸当たりの販売価格の上昇で住宅事業が伸びたほか、ビル事業における賃貸収益の上昇などが好調の理由だ。

「2020年代の持続的な成長に向け、新たな収益の柱を築く」

 決算発表翌日の5月11日、好業績を追い風に、4月に社長に就任した吉田淳一氏は20年3月期を最終年度とする3カ年の新たな中期経営計画を打ち出し、そう目標を掲げた。

 この新たな中計で示された投資計画は、従来の三菱地所のイメージとは一線を画すものだ。

 同社は、東京・丸の内エリアに所有する約30棟のビルをドミノ式に建て替える安定したビル事業を大黒柱とする“丸の内の大家”よろしく、保守的な社風で知られる。ところが、新中計の3カ年の合計投資額は、過去3年間の投資実績を3割近くも積み増した1兆3500億円に上る積極的なものだ(図(4))。

 実際、三菱地所はこの2年、すでに投資拡大へのアクセルを踏み始めている。図(2)を見てほしい。三菱地所と最大のライバル、三井不動産の過去3期のキャッシュフロー(CF)の推移だ。

 ここで注目したいのは、新規事業への設備投資や有価証券の購入・売却といった、将来の利益確保のためにどれくらい投資し、また、資産運用のための売買でどれくらいもうけたかを示す投資CFだ。基本的に、投資に積極的な企業ほどマイナスの額が大きくなる。

 三井不動産の投資CFが一貫して▲2000億円台を保ちつつもマイナス額が減っているのに対し、三菱地所は年々、マイナス額が増えていることが分かる。さらに新中計初年度の18年3月期の予想では▲3560億円へと、17年3月期からさらに300億円近くマイナス額が拡大する見込みとなっている。

 一方、資金調達や借入金返済などの資金収支を示す財務CFも、三井不動産が過去3期、プラス幅が減少したのに対し、三菱地所は17年3月期こそわずかにマイナスだったが、18年3月期は1240億円のプラスに転じる見込みだ。

 三菱地所の投資CFを押し上げている主な要因は、設備投資額の増加にある(図(3))。18年3月期は、その額3570億円と、前中計の初年度の15年3月期の2倍以上を予想する。