初夏とはいえ時には夏以上に暑くなる事もあります。中澤さん(44才男性、仮名)は朝から同僚とともに倉庫内で商品の整理をしていました。(「リスク対策.com」本誌2015年5月25日号(Vol.49)掲載の記事を再掲したものです)。
気温はさほど暑くないのですが倉庫内は風通しが悪く蒸し蒸しとしています。同僚の1人が「めまいがする…」と訴えてうずくまり、そばにいた中澤さんが駆け寄って声をかけました。「どうした?」同僚は「気分が悪い…吐き気がする…」と訴えています。
中澤さんは同僚を横にし、ABCDE(F)アプローチ(本誌2015年3月号Vol.48号P95参照)で評価を試みます。発語はあり気道(A)は開通しています。(B)呼吸は速いですが(呼吸数:24回/分)、しっかりできているようです。脈・循環(C)もしっかり触れます。受け答えはできているので意識(D)は問題ないようです。全身を観察(E)すると、顔が紅潮して大量の汗をかき、身体を触るととても熱く感じます。一体何が起こったのでしょう?我々は何をすればよいのでしょう?!
いかなる時でも急病人が発生したらABCDE(F)アプローチです。中澤さんの評価では、この同僚の方は体温が高く「Eの異常」があります。その原因は状況から考えると熱中症を疑います。
熱中症とは?
熱中症には、熱失神(めまいや立ちくらみ)、熱けいれん(いわゆる、こむら返り)、熱疲労(気分不良や倦怠感)、熱射病(意識障害やけいれんを伴う最重症)などいくつかのタイプがありますが、これらには明確な線引きがあるわけではなく、実際にはオーバーラップも多いのでまとめて熱中症と考えても差し支えありません。軽い症状(例:ふらつきやこむら返りのみ)で熱けいれんや熱疲労だと考えていても迅速に適切な処置がなされないと悪化することもあるので注意が必要です。熱中症は致死的な状態であり油断は禁物です。