日増しに暖かくなり、スーツの下も汗ばみ始めた今日このごろ――実は、この時期の汗こそが、一年中でもっともクサいことをご存じだろうか?春先の汗がクサい理由と、その対策を汗の専門家に聞く。(取材・文/森 江利子[清談社])
1年中でもっとも
“悪い汗”が発生しやすい春
「冬の間は汗をかかないので、汗腺の機能は衰えてしまいます。つまり、少しずつ汗をかき始めたこの時期は、もっとも汗腺の機能が弱まっており“悪い汗”が発生しやすいのです」。こう教えてくれるのは、『五味クリニック』院長、五味常明氏だ。
「逆に言えば、汗をかけばかくほど汗腺は鍛えられ、“良い汗”を出せるようになります。気温の上昇に伴って汗をかくことは『温熱性発汗』といいますが、実はもっとも汗がクサくないのは、この『温熱性発汗』によって大量に汗をかく夏なのです」
真夏は大量に汗をかくが、蒸発するのも早い。また、こまめに汗を拭き取りやすいため、実はニオイが発生しにくいのだ。それに対し、気温は上がるものの、真夏ほど薄着にはならないこの時期は、服の中に汗がこもりがちになる。うまく蒸発せずに皮膚に付着したまま乾いた汗は、時間が経つにつれ皮膚の雑菌や皮脂に反応し、ニオイを強めてしまうのだ。
汗の素になる成分は血液だ。暑いときや運動をしたとき、皮膚血管を流れる血液が汗腺に摂り込まれる。血液の中には、ナトリウムやミネラルのほか、アンモニア、乳酸などさまざまな成分が含まれているが、それらの老廃物は汗腺で濾過され、血液中に再吸収される。
ここで残った水分が汗となって体外に排出される。つまり、汗腺の濾過・再吸収機能が正常に働けば、汗は水分に限りなく近い、サラサラとしたニオイのない“良い汗”となるわけだ。