猛暑の年は1700人を超える人が熱中症で死亡している。今年の夏もここ数日で急に暑くなり始め、救急搬送される人が増えており、すでに死亡例が報告されている。熱中症で不幸な結果にならないために、これだけは知っておきたい対策や予防策などをまとめた。(医療ジャーナリスト 木原洋美)

二日酔い?働き盛りの男性が
早朝からトイレにへたり込む

熱中症で死なないための最低限の基礎知識

 (どうなったんだ、俺?)

 都内に住むマコトさん(仮名・48歳)は、早朝からトイレの床にへたりこみ、うめき声を上げた。身体がひどく熱い、頭が割れるように痛む、肩から首にかけてカチコチに張っており…吐いてしまったのだ。胃袋がひっくり返りそうに痙攣しているが、もう吐くものなんてない。

 (二日酔いか?でもそんなに飲んだかな)

 前日は、仕事仲間と暑気払いに出かけた。夏バテ気味でダルかったが、「旨いビールを飲むため」、事前にサウナに行き、たっぷり汗も流した。

 (そういえば、居酒屋に入る前から体調は悪かったな)

 食欲がなかったので朝食は抜き、昼はコンビニのざるそばと野菜ジュース。いつも五臓六腑にしみわたるほど美味しく感じる乾杯のビールもイマイチだったが、せっかくなので、「気合で飲んだ」。

 (あぁそうだ、ビールを3杯ぐらい飲んだところで、足がつったけ)

 結局、ビールの後はチューハイをがぶ飲みし、タクシーで帰宅した時はとにかく頭が痛くてフラフラ。リビングのソファに倒れるように寝込んだのだった。

 うめき続けるマコトさんの声で、同居する母親(80歳)が起きてきた。

「あなたどうしたの? すごい汗。あら、熱もひどいわ、夏風邪かしら」

 息子のただならぬ様子に驚いた母親は、マコトさんが止めるのも聞かず、救急車を呼んだ。