ビジネスの本質は驚くほどシンプルである

 具体的に説明しましょう。
 私が若いころに投資したビジネスに蚊取り線香があります。

 この事業発案のきっかけは、私の生活実感にありました。マレーシアで生活を始めて悩まされたのが蚊だったのです。当時は、エアコンなどない時代でしたから、窓を開け放して寝るわけですが、現地の蚊取り線香は効き目が弱いために蚊がやってくるのです。

 それだけではありません。現地の蚊取り線香は品質に難があり、夜寝ている間に立ち消えしてしまうことが多かった。しかも、強度が弱かったために、輸送中に線香が割れるなど問題が非常に多かったのです。現地の人々に聞いても、みな同じ悩みをもっていました。

 そこで、目をつけたのが日本製の蚊取り線香でした。当時から、日本製の蚊取り線香は非常に性能がよかったのです。しかも、日本で販売できるのはせいぜい3ヶ月ですが、マレーシアは一年中夏です。だから、日本製の蚊取り線香をマレーシアに合った製品にアレンジすることで、大きなビジネスに育てることができると考えました。ここに、「勝てる場所」があると踏んだわけです。

 私は、日本の殺虫剤メーカーにマレーシアでの事業展開を提案。私はすでにマレーシア国内に営業拠点をもっていましたから、事業の可能性についてすぐに理解してもらうことができました。そして、交渉の末、技術供与や第一線の技術者の派遣など、ビジネスを成功させるための体制を整備。マレーシアの蚊取り線香市場は、すでに2社の寡占状況にありましたが、二人三脚でマレーシア市場をひっくり返すための戦略を立案しました。そして、数年は苦労しましたが、マレーシアの蚊取り線香市場のトップシェアを獲得することに成功。私は、人生で二度目の大成功を手にしたのです。

 このとき、私には大きな投資ができるだけの資金が手元にありました。しかし、成功をたぐりよせるうえで最も重要だったのは、「既存の蚊取り線香では解決できていない人々の悩み」をつかんだこと。そして、その問題を解決できるパートナーとともにビジネスをオーガナイズできたことなのです。