ヤマト運輸は総量規制で8000万個の荷物を減らし、当日配達から撤退する方針だ。そこに目を付けた新興勢力が、のろしを上げた。一方、佐川急便と日本郵便はどう出るのか。(週刊ダイヤモンド編集部 柳澤里佳)
「車と人をかき集めろ!」。中堅物流企業、丸和運輸機関の和佐見勝社長はこう社内にげきを飛ばしている。「桃太郎便」で展開する宅配事業を強化するためだ。5月、軽ワゴンを新車でなんと1万台発注。年内に3500台が納品予定だ。中古車も500台ほど手当てした。
「ラストワンマイルは今がチャンス。ネット通販が伸び盛りの中、大手が運ばない当日配達の荷物を誰が運ぶかで、下克上が始まった」(和佐見社長)と鼻息は荒い。
20年間で宅配便の数は急激に膨れ上がり、今や年間約40億個。市場シェアは大手3社で9割を占める。その一方、足元では新興企業がじわじわと勢力を拡大しつつある。近年、企業の物流業務を一括して請け負うサードパーティーロジスティクス、通称「3PL」企業がインターネット通販大手と組み、宅配に手を広げているのだ。
中でも注目されるのが、アマゾンと地域限定で提携する配達業者、通称「デリバリープロバイダ」で、丸和もこれに参画した。
先行者はアマゾンと二人三脚で急成長している。例えばアマゾンの倉庫業務や宅配が売上高の7割を占めるファイズは2013年に創業し、わずか4年で上場を果たした。他にはTMGやSBS即配サポートなどが取引を拡大中だ。
後発の丸和は、生協や大手ネットスーパーの宅配を長年手掛けてきたノウハウを生かし、接客の質で差別化を図る。「早く、丁寧に運べば、大逆転も狙える」(同)。
人材獲得も独特だ。年間250人の新卒採用を目標に掲げており、社内にラグビーチームをつくることで、関東圏では新卒ラガーマン40人超の採用に成功した。この取り組みを関西圏でも進めている。