「えっ、国に返せるの?」いらない土地を手放す方法を全力解説!
大切な人を亡くした後、残された家族には、膨大な量の手続が待っています。しかも「いつかやろう」と放置すると、過料(行政罰)が生じるケースもあり、要注意です。本連載の著者は、相続専門税理士の橘慶太氏。相続の相談実績は5000人を超え、現場を知り尽くしたプロフェッショナルです。このたび、最新の法改正に合わせた『ぶっちゃけ相続「手続大全」【増補改訂版】』が刊行されます。本書から一部を抜粋し、ご紹介します。
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「いらない土地」を手放す方法を全力解説!
本日は「相続した土地の手放し方」についてお話しします。年末年始、相続について家族で話し合った方も多いかと思います。参考にしてください。
「相続したけど、管理もできず手放したい土地がある」。そんなお悩みを持つ方にとって、近年注目されているのが「相続土地国庫帰属制度」です。
この制度は、相続などで取得した不要な土地を、一定の要件を満たすことで国に引き取ってもらえる制度で、2023年4月に始まりました。当初は「使いにくい」「現実的には難しいのでは」といった懐疑的な見方もありましたが、申請件数は2025年5月時点で3854件、実際に国に引き取られた土地は1699件にのぼります。
帰属件数の内訳を見ると、宅地(634件)が最も多く、次いで農用地(531件)、森林(105件)と続いています。制度の要件さえ満たせば、想定よりも広く活用できる実態が見えてきました。
制度の基本とあわせて、よくある疑問をQ&A形式で整理していきましょう。
Q1.どんな土地でも引き取ってもらえるのか?
いいえ。一定の要件を満たした土地のみが対象となります。代表的な対象外の例としては、「崖地」「大量のゴミがある」「地上に工作物がある」「災害リスクが高い」「現に通路などとして利用されている土地」などがあります。
ただし、必ずしも完璧に整備された土地である必要はなく、実務上は「境界が確定測量されていなくても、お隣さんと境界について揉めていなければOK」とされるケースもあります。「放置された荒れ果てた土地」であっても、必ずしも除外されるわけではなく、状況によっては対象となる可能性があります。制度の対象となるかは、事前相談である程度判断がつくため、まずは相談してみることが大切です。
Q2.申請できるのはどんな人?
この制度を利用できるのは、相続または遺贈により土地の所有権を取得した人に限られます。売買や贈与など、自ら積極的に取得した土地は対象外です。共有名義の場合は、共有者全員で申請する必要がありますが、一部が売買等で取得した共有者であっても、相続等で取得した人と共同して申請すれば、制度の利用が認められることがあります。
例えば、AとBが共同で土地を購入し、その後Aが死亡して相続人Cが持分を承継した場合、Bは相続以外の取得ですが、Cと共同で申請することが可能です。
Q3.費用はいくらかかるの?
まず、「審査手数料」が1筆あたり1万4000円必要です。この費用は申請時に納付し、審査の結果にかかわらず返金されません。そのうえで、承認後には「負担金」が必要です。原則として1筆あたり20万円ですが、土地の種類や面積によっては大幅に増額され、100万円を超えるケースもあります。負担金は承認通知から30日以内に納付しなければならないため、あらかじめ金額の目安を法務局に確認しておくと安心です。
Q4.審査にはどれくらいの時間がかかる?
個別の事案によって異なりますが、数か月~半年以上かかることもあります。書類に不備があった場合や、法務局が追加の確認を行う場合はさらに長期化することもあるため、余裕を持ったスケジュールで進めましょう。
Q5.誰に相談すればいいの?
まずは管轄の法務局が窓口です。制度の対象になりそうか、どのような資料が必要かなどについて、事前に相談することができます。また、土地に関する登記や評価、境界の確認などが必要な場合には、弁護士・司法書士・土地家屋調査士などの専門家のサポートを受けるとスムーズです。
土地を持ち続けるデメリットは?
いらない土地をいつまでも持ち続けていると、固定資産税・管理費用・草刈り・隣地トラブルなど、負担ばかりが増えていきます。相続等で取得した不要な土地に悩んでいる方は、相続土地国庫帰属制度を前向きに検討してみてはいかがでしょうか。2026年からスタート予定の「所有不動産記録証明制度」とあわせて活用すれば、相続人が把握できていない土地の有無を確認し、そのうえで不要な土地だけを国に返すといった活用も可能になります。土地の相続に「いらない」の選択肢ができた今、制度を上手に使って、将来の不安を減らしていきましょう。
(本原稿は『ぶっちゃけ相続「手続大全」【増補改訂版】』の一部抜粋・加筆を行ったものです)








