このほか、「余剰買い取り制度」ではなく「全量買い取り制度」にすることも必要になる。
“余剰”買い取りになった理由は、省エネを促すためと説明されている。余った電気を売ることが節電の推進につながる側面はあるだろう。だが、そのメリット以上に、「不公平」という根源的な問題をはらむのは問題だ。
余剰率は、電力使用者によって0%から100%までのバラつきがある。大家族や介護家庭などだと余剰電力が0%の場合もあり、制度のメリットが享受できない。ところが、例えば、共稼ぎ世帯や空き家など昼間は人がいない家庭では、ほぼ全量を売れる。これは、どうみても制度が内包する不公平だ。
制度が期待する省エネ効果は、副次的なものにすぎない。本来の省エネとは、個人がこまめにスイッチを消すことではなく、高効率の家電機器に替える、断熱効果を高めるなどといった、構造的な取り組みのはずだ。
制度の副次的な省エネ効果を根拠に、最も重要な自然エネルギーの普及と、最も問題の大きい不公平感の払拭をないがしろにして制度設計するのは、本末転倒と言わざるを得ない。
太陽光・風力・水力・地熱・バイオマス…
発電技術ごとに条件を細かく設定するべき
買い取りの条件も、もっときめ細かく定めるべきだろう。
たとえば、太陽光発電でいえば、ドイツではメガソーラーと家庭用の買い取り価格は異なる。パネルの設置場所が屋根なのか壁なのかによっても、違いがあるほどの細やかさだ。
風力発電では、洋上風力を高価格に設定しないと開発インセンティブは働かない。あるいは、特に「市民風車」のように地域に1~2本作る小規模なプロジェクトには高めの価格設定をしてもよい。平均風速に応じて価格を変えるという方法もある。平均5メートルの場所は25円、7メートルでは18円という設定だ。そうすれば、現在はあまり設置されていない場所にも風車が建つことにつながっていく。
水力では、3万キロワット未満の中小水力が対象となっているが、やや規模が大き過ぎるのではないだろうか。国際的に共通した「サステナブル・ハイドロ」という1万キロワット以下の規模に、基準を落とすべきだろう。なおかつ、1万kW以下をすべて同一価格にするのではなく、1000kW規模の小水力は高価格に設定するなど、変化を持たせたほうがよい。
地熱に関しては、もう少し価格を上げないと投資インセンティブは働かないだろう。
そして、最も面倒なのがバイオマスだ。現在のような一律の価格設定では、最も低コストでできる石炭混焼型の一人勝ちになる恐れがあり、燃料が引っ張られ集中してしまう弊害が残る。ドイツでは、燃やし方と燃料の種類によって価格設定をきめ細かく変えている。農業用のバイオガスと木くずでは価格が異なって当然だろう。同じ木くずでも、輸入材なのか廃材なのかによって価格設定が変わってしかるべきだ。
このように、検討する余地は豊富にあるが、これまで真剣に検討されてこなかった。まずはその議論を進め、そのなかで種類、規模、条件に応じた丁寧な制度設計が必要だ。