ただ私は、官僚の役割は仮に政治家が好まない事でも専門的知見に基づききちんとした意見を述べることであり、それを取り入れるかどうかは政治指導者の判断である、その判断に官僚は従うという鉄則を守りたいという意識が強かった。そして、政治家の意見とは異なる主張をしたことで、私が政府内で批判され更迭されることはなかった。

 しかし、このような「政」と「官」の関係は、国の統治体制によっても異なるし、さらに日本の場合は内外環境の変化と共に大きく変わってきたことに留意しなければならない。

 米国の大統領は4年ごとに国民の直接投票によって選ばれる。大統領は自らの好む人材を政治任命し、自らの基本政策を実現しようとする。政治任命された政権幹部も4年の間に大統領の政策を実現しようとする。この大統領制の下で重要な概念はチェックアンドバランスの仕組みである。

 大統領が強大な権力の下で独裁的にならないよう、議会も権限を持ち、専門的なスタッフを有して大統領の政策をチェックし、行き過ぎた政策を止めようとする。司法も大統領とは独立してチェック機能を果たそうとする。トランプ大統領に対してこうしたチェックアンドバランスの機能が働き出しているのは周知の事実である。

統治体制と時代で異なる「政」と「官」の関係
官邸機能強化の方向は間違ってはいない

 翻って日本は議院内閣制であり、首相は議会で多数を持つ与党の代表が就任する。首相が国民の直接選挙で選ばれている訳ではないので、首相自身がスタッフを政治任命し議会の承認を受けて統治を行う訳ではなく、内閣が行政の決定権を持つ。

 各省庁の官僚は、米国のように大統領が替われば、辞任して去るわけではなく、新しい政権にも仕えるわけで、中立を担保するため身分が保障されてきた。

 戦後の日本では長い間、政権交代は起こらず、与党であった自民党と官僚、そして財界の間に鉄の三角同盟と言われる関係が存在し、米国を中心とする西側世界の一員として自由民主主義・資本主義体制の利益を増進していくという路線のもとではあまり大きな政策選択の幅はなかった。

 官僚はその継続性を強みとするのだが、省益を守ることを優先するような弊害が強くなった。しかし、冷戦の終了やグローバリゼーションの本格化と、少子高齢化のなかで、日本は政策選択の幅は従来の路線から拡がった。そして、民主党政権の誕生は本格的な政権交代となった。