これからのホテルは
ソフト面がカギ

 同ホテルにはリピーターが多く、「30回ぐらい利用していただいている方もいる」と中原氏。その大きな理由は、ソフト面の多様性にありそうだ。

ホテルアンテルーム京都のロビーでは、鹿をモチーフにした彫刻家・名和晃平氏のアート作品が出迎えてくれる。(C)Kohei Nawa / Swell-Deer / 2010-2016 / mixed media / Courtesy of SANDWICH, Kyoto

 1階ロビー横には「ギャラリー9.5」がオープンに広がっており、デヴィッド・ボウイ写真展はここで開催されている。ギャラリーの展示内容は1ヵ月程度で入れ替わり、ホテルの宿泊客はもちろんのこと、誰でも無料で閲覧できる。また、同フロアにあるバーは、企画展にちなんだトークショーや、ライブ、ワークショップなど、さまざまなイベントを実施。訪れるたびに異なる楽しさや新鮮さを感じさせる、さまざまな仕掛けがある。

「ギャラリーやバーのある1階フロアは、あえて固定物をそぎ落とし、余白を多く残しています。時代の流れに合わせてその余白をうまく使って、ホテル自体をどんどん変化させていきたいと考えています」(中原氏)

 UDS株式会社が運営するホテル・ホステルは全国に7件あるが、すべてコンセプトが異なる。例えば、京都の伝統的な町屋をモダンに表現した「ホテル カンラ 京都」は、細長い「マチヤスタイル」の客室などを通じて京都の文化を体感する場。浅草にあるホステル「ブンカホステル トーキョー」では、外国人旅行者が「現代の日本らしさ」を感じることができる。

「私たちUDSは『世界がワクワクするまちづくり』を事業ビジョンとして掲げています。地元に根差して『まちの拠点』となるホテルをつくることは、まちの賑わいにもつながるでしょう。地元の人も訪れる仕掛けができれば地域の情報が自然と集まり、そんな情報を求めて旅行客がやってくる。さまざまな人たちのハブとなるような、コミュニティが生まれる仕掛けを常に意識しています」(中原氏)

 日本のホテルには欧米スタイルを持ち込んだ海外ブランドが目立つが、近年、圧倒的非日常感を追求する「星のや」や、ロボットがフロント業務やコンシェルジュを務める「変なホテル」など、日本発の特徴あるホテルの存在感が増している。さて、これからはどのようなホテルの時代になるのだろうか。

「同じようなホテルをつくるだけでは、建物の老朽化とともに客足は遠のいてしまいます。建物というハード面だけでなく、独自のコンセプトに基づいてソフト面で価値を生み出すホテルが、今後は増えていくのではないでしょうか」(中原氏)

(藤崎雅子/5時から作家塾(R))