改正耐震改修促進法によって、ホテルや旅館の耐震問題が浮き彫りになっている。国は早期の事態改善をめざしているが、耐震診断の公表は自治体ごとにばらつきがある。ホテルや旅館も、耐震問題への対応という大義と、改修工事に伴う重い負担の板挟みにあって、身動きが取れない場合が多い。解決のためには、ホテルや旅館が抱える構造問題にまで踏み込む必要がありそうだ。(「週刊ダイヤモンド」編集部 森川幹人)
「2020年の東京オリンピックが終われば、旅館の廃業が増えるだろう」
とある旅行会社の営業マンは、出張先の有名温泉観光地で、旅館関係者のぼやきを聞かされた。
ぼやきの背景にあるのは、2013年に国土交通省が提出した改正耐震改修促進法だ。同法は、東日本大震災を契機として、最大震度6強から7の地震を想定し策定されたもの。1981年以前の基準で建てられた大型施設(ホテルや旅館の場合、3階建て以上、延床面積5000m2以上)に関して、2015年末までに耐震診断と結果の公表が義務付けられたのだ。
診断費用は施設の自己負担で、結果は立地する自治体に報告する。すると、最大震度6強から7の地震が起きた際、倒壊または崩壊する危険性が高い(ランク1)、危険性がある(ランク2)、危険性が低い(ランク3)の3区分で評価される。