日本企業も対応、迫られる
生産拠点や部品調達の再構築

 こうした不透明感に対し、日本企業はどのような準備をすべきだろうか。

 英国をEUの生産・展開拠点とする日本企業は「合意なし離脱」が与え得る影響を、より現実味を持って想定しなければならない。

 具体的には、(1)関税コスト(輸出入ともに)の上昇、(2)価格競争力低下を受けた需要の減少、(3)移民労働力供給の減少、(4)金融機関は単一パスポート失効による営業権喪失等が想定される。

 結果として利益率の低下(場合によっては営業停止)が予想されるため、サプライチェーンの見直しと再構築が必要になろう。

「合意なし離脱」はポンド安をもたらすと考えられるので、英国拠点を維持する製造業にとってはコスト上昇をいくらかは吸収できるだろうが、もう一度、EUの工場として、中東欧に注目するのも一考かもしれない。

 サービス業はことさら言語、専門知識・スキルといったソフトインフラに依存するため、顧客の分布をにらみながら、人的インフラの比較的整ったドイツやフランスを軸にするのであろうが、先日も大手米銀がフランクフルトへの拠点移転と人員増強を発表したように、世界中の企業と限られた資源を奪い合うことになる。

 各企業の経営戦略と体力が透けて見える一年となりそうだ。

 また英国を最終消費地とする輸出企業は、英国経済の悪化リスクが消費、投資双方から高まったことを認識する必要がある。景気下支えのための財政出動にはあまり期待できそうにないが、新政権の財政スタンスは、11月頃に予定されている秋季財政報告で確認できる。(ちなみに、今年度までは春季財政報告が予算案であったが、2018年度からは秋季財政報告が正式な予算案になる)。

 金融政策の動きにも注目が必要だ。BoEは昨年の国民投票後、企業の将来位見通しの急激な悪化を受けて、即座に金融緩和強化に舵を切り、英国経済は堅調に推移した。今回の総選挙後に行われた金融政策決定会合では、むしろ利上げ賛成派が増えて、07年以降、最も利上げに近づいた決定会合となった。

 足もとまでの経済指標の堅調さや、利上げによって一段のポンド安を食い止める狙いがあったと考えられるが、利上げは投資コスト高に繋がるだけに、経済成長とインフレのバランスをどのようにとっていくのか、金融政策の方向性も注意深く見極めていく必要がある。

(野村総合研究所 主任研究員 石川純子)