5月25日、ダイソンはコードレススティック掃除機の「V7シリーズ」を発売開始した。昨年発表されたフラッグシップモデル「V8シリーズ」の静音性や機能を引き継ぎつつ、軽量化している。次々に独創的な新製品を繰り出す英ダイソンで、掃除機分野の技術者のヘッドを務める、ジョン・チャーチル氏にモノづくりの秘訣を聞いた。(ダイヤモンド・オンライン編集部 松野友美)
掃除機市場が拡大しても
飽きて捨てられるモノは作らない
――新発売のコードレススティック掃除機の「V7シリーズ」にはどんな特徴がありますか。
吸引力はコードレススティック掃除機の最高級モデルの「V8シリーズ」よりは劣りますが、2年前に発売されたエントリーモデル「V6シリーズ」と同等です。しかし、稼働時間は「V6」より10分長くなり、日本人の平均的な1回の掃除時間である「40分」(ダイソンの調査)を1回の充電でまかなえるようになりました。コードレスなので高い所の掃除も片手でできるほか、電源を気にせず身軽に動き回ることができるので、家事のストレスを減らすことができます。
──2015年のV6シリーズ発表以来、毎年、コードレス掃除機の新製品を発表しています。掃除機市場に変化はありますか。
コードレス掃除機を展開し始めて見えてきたことですが、掃除機市場におけるダイソンのシェアが伸びたことに加え、市場そのものが大きくなりました。市場の拡大に伴ってダイソンも、ここ10年間で3.2億ポンドをモーター技術に投資しています。日本市場では、いまだ70%の人々が「コード付き」の掃除機を使っており、まだまだ拡大のチャンスがあると思っています。
──次々に新商品を発売すると、前のモデルが売れなくなるのではないでしょうか。
ダイソンの商品は“ファッション”ではないので、新製品が出たからといって使っていた製品を捨てるような文化は作りたくありません。「新しいモデルが出たから買う」のではなく、「新しいベネフィットを感じるから」買ってほしいと思っています。
以前使っていた、前のモデルも捨ててほしくもありません。買い替えてもモデルによって使い道を分けてもらえばいい。例えば、車の掃除には最新のコードレス掃除機を使い、古いモデルはペットの寝床掃除などに使うといったイメージです。
私たちはユーザーの家事を楽にしたいし、人目を引くだけで使い勝手が悪いような製品作りは避けたい。だから、価値のない機能は加えたくないのです。そういう意味で、製品の技術はより知的で複雑になっていきますが、何を意識し開発しているのかを消費者に伝えていくことが重要だと考えています。
例えばV7は、片手で握れるハンドルの上部についているボタンに人差し指をかけて握れば掃除機が動き出します。そして、吸い取られたゴミや塵は、ハンドルの目の前についている透明のビンに溜まっていく。その様子がよく見えます。このようにボタンに触れたという行為から、ゴミを吸い取るという結果に至るまでの「技術の働き」が一目で分かるようにしているのです。このように、技術がきちんと機能しているということをユーザーに見せることで、製品に対する信頼を上げたいと考えているのです。