ビッグデータ解析で明らかに!
「日本の病院は当たり外れが大きい」

 小林麻央さんのケースからもわかるように、日本のがん患者とその家族は、「本当にこの選択でいいのか」という不安を抱えながら孤独な戦いを強いられる。あくまで決断するのは本人だが、その決断を後押ししてくれる「伴走者」がいない。だから、時に「あのとき、もうひとつ病院に行けばよかった」という後悔も生まれる。

 つまり、アキ氏が提言するように「キャンサーナビゲーション」という仕組みが日本にも導入されれば、「がん格差」に悩む人たちの苦しみが軽減される可能性があるのだ。

 そう言うと、「アメリカみたいな医療を受けられない人がたくさんいるような国ならそういうサポートも必要だろうけど、日本のような誰もが質の高い医療を受けられる国では余計な混乱を招くだけじゃない?」というような人もいるだろうが、個人的にはアメリカよりも日本の方が、この仕組みを必要としていると感じている。

 なぜかというと、アキ氏の専門分野である日米の医療ビックデータで分析してみると、実は日本の「がん医療」というのは、アメリカよりもはるかに「質」のバラつきがあるからだ。本書に詳しいデータが多く掲載されているので、ここでは詳述しないが、この現象をアキ氏は以下のように総括している。

「(アメリカの)多くの学会では病院のガイドライン遵守率を調査し、公表しています。その結果、アメリカの患者は等しく最新の標準治療を受けることができるようになっているのです。一方で、日本にも専門分野ごとの学会があり、それぞれの学会で診療ガイドラインを出しています。しかし、それが遵守されているかといえば、遵守率の調査は行われておらず、結果も公表されていないためわかりません。日本では、病院のやり方、医師個人の判断や経験に左右され、ガイドラインが遵守徹底されているとはいいがたい現実があるのです」(P85)

 もちろん、アキ氏は日本の医療の「質」が低いなどということを主張しているわけではない。むしろ、がん研有明に術後入院した際には、アメリカでは見られない日本の医療従事者の献身ぶり、特に看護師の役割の大きさを評価し、ベンチマーク分析では見えてこない、患者の「救い」となっていると指摘している。ただ、事実として、医師や病院の個人によっておこなわれている医療にバラつきが多いということを指摘しているのだ。

 要するに、当たり外れが激しいのだ。