2人に1人が、がんになり、3人に1人が、がんで亡くなる時代。さまざまな研究が進むなか、「がんと心の関係」でも、多くのことが明らかになってきました。

「精神腫瘍学」という、がん患者の心のケアを専門とする精神科医で聖路加国際病院リエゾンセンター長の保坂隆医師。近著『がんでも、なぜか長生きする人の「心」の共通点』(朝日新聞出版)でも、がんと向き合うときの「心のあり方」の重要性について説いています。がんでも長生きする人たちの「心」には、どのような共通点があるのでしょうか? 保坂先生に話を聞きました。

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 私が専門とする精神腫瘍科は、「がんで落ち込んでいる患者さんの心を元気にする」のがミッションです。

 がんを告知されたとき、多くの人は「がん=死」というイメージを思い浮かべて、心に大きな衝撃を受けます。そして、衝撃を受けたあと、「受容」と「否認」を繰り返しながら、やがて事実を冷静に受け入れる「適応」の段階へと進んでいきます。

病気を受け入れていく過程/保坂医師提供(編集部で改変)
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 しかし、がん患者さんのうち、10~35%が「適応障害」を、5~10%が「うつ病」を併発することがわかっています。そして、心の状態が悪化した人は、再発や転移などのがんの予後も良くないことが明らかになっています。だからこそ、がん患者さんの心のケアの重要性が、近年、注目されているのです。

 では、がんと告知された後、どのようにがんと向き合うことが、一番、がんの予後を良くして、寿命を延ばすのでしょうか。

 かつてイギリスのグリアーという心理療法家が、手術後3ヵ月たった乳がん患者たちと面接をして、それぞれの病気への向き合い方を調査しました。すると、大きく分けて四つのグループができました。

(1)「がんに負けないで必ず勝つ!」と、闘争心にあふれたグループ
(2)がんを真摯(しんし)に受け止めて、粛々と治療に励むグループ
(3)「もう駄目なんだ」とあきらめて絶望的になっているグループ
(4)自分ががんであることを忘れたかのように過ごすグループ

グリアーが、その後12年間にわたってこの四つのグループを追った結果、どのグループが一番、長生きだったと思いますか?