考えがまとまるまでは黙る

 もちろん、とりあえず話してしまうという気持ちもわかります。考えている間の沈黙が怖いからです。大丈夫です。しっかり考えがまとまるまで黙ってください。実は無駄なことばを言う代わりにしっかり黙ることこそ、伝わる話をするために最も必要なのです。黙っている間、自分ではものすごく長い時間のように思えますが、聞いているほうはそれほどには感じていません。しかも黙ってもらうことで、相手もこれまでのあなたの話を整理したり、しっかり聞こうという心構えもできます。信じられないかもしれませんが、数々の話す現場を体験してきた私の実感です。自信を持って黙ってください。沈黙は相手のためにとっているのだというくらいの気持ちでOKです。

 それでも沈黙が耐えられない場合は「すみません、ちょっと言いたいことを整理させてください」などと、焦らず心を込めて相手に言ってみましょう。「頭の悪い奴だと思われるかもしれない」なんて心配は無用です。きっと相手は、「この人は真剣にこたえようとしているんだ」と思ってくれますよ。

 流ちょうにペラペラ話す必要はありません。話す内容をしっかり考え、ゆっくり間をとって話せばいいんだ、と強く思って話すようにすることを心からおすすめします。

 

* 心に届く話し方ルール *
とりあえず話し始めない

松本和也(まつもと・かずや)
スピーチコンサルタント・ナレーター。1967年兵庫県神戸市生まれ。私立灘高校、京都大学経済学部を卒業後、1991年NHKにアナウンサーとして入局。奈良・福井の各放送局を経て、1999年から2012年まで東京アナウンス室勤務。2016年6月退職。7月から株式会社マツモトメソッド代表取締役。
アナウンサー時代の主な担当番組は、「英語でしゃべらナイト」司会(2001~2007)、「NHK紅白歌合戦」総合司会(2007、2008)、「NHKのど自慢」司会(2010~2011)、「ダーウィンが来た! 生きもの新伝説」「NHKスペシャル」「大河ドラマ・木曜時代劇」等のナレーター、「シドニーパラリンピック開閉会式」実況など。
現在は、主に企業のエグゼクィブをクライアントにしたスピーチ・トレーニングや話し方の講演を行っている。
写真/榊智朗