新刊『心に届く話し方 65のルール』では、元NHKアナウンサー・松本和也が、話し方・聞き方に悩むふつうの方々に向けて、放送現場で培ってきた「伝わるノウハウ」を細かくかみ砕いて解説しています。
今回の連載で著者がお伝えするのは、「自分をよく見せることを第一に考える話し方」ではなく、「聞いている人にとっての心地よさを第一に考える」話し方です。本連載では、一部抜粋して紹介していきます。
「とりあえず話し始める」から失敗する
人前で話すのは不得意ではない。ただしことばは出るものの、調子よく話しているうちに自分で何を言っているのかわからなくなったり、初めに言おうとしていたことと違ってしまったりする方がいます。話を聞いているほうは、話す方が気持ちよさそうにしゃべっているのに中身が理解しにくいため、よけいにストレスを感じてしまいます。どうしてそうなるのでしょうか?
最大の原因は、「とりあえず話し始める」ことにあります。もちろん、友だち同士や家族の間のふだんの会話でしたらそれでも構いません。問題は、仕事など相手に話の内容をしっかりと理解してもらうことが求められる場面では、何が言いたいかわからないうちに話をしてしまうことで、聞いている人を混乱させてしまうのは避けなくてはなりません。
そのためには、話す前にまずこれから話す内容はどんなものが適切か、考えてから話すことです。
例えば、得意先の課長から、来週打ち合わせできる時間はないか聞かれたとしましょう。
あなたの頭の中には来週の予定表がとふわっと浮かんでくるでしょう。その頭に浮かんだスケジュール帳を思い出しながらこんなふうに話したらどうでしょう。
「来週は忙しくてですね~、月曜が九州に出張で、火曜水曜は一日社内での会議が続いていまして、木曜は代休をいただいておりまして~、というのもこの日は小学一年の娘の学芸会がありましてねぇ、初めてなもので見に行ってやりたいんですよ~。で、翌日は金曜ですね…。その日は午後3時から6時までなら時間を作れますよ」
聞いているほうはいらいらしますよね。もちろん正解は、「金曜があいています。時間は…」と最後の部分だけ言えばいいですよね。あたりまえだと思った方も多いでしょう。でも気をつけていないと、相手の質問とは関係なく自分の言いたいことをダラダラと先に言ってしまうことってあると思います。