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フェイスブックは反面教師!?
「グーグル・プラス」の後発メリット

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第157回】 2011年8月12日
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 しかし、グーグル・プラス躍進の理由を、機能面だけで語るのは間違いだ。競争環境がグーグルに味方している点にも着目すべきである。

 SNSの世界には現在、3つの強者がいる。友達関係のフェイスブック、仕事やキャリアのネットワークを広げるリンクトイン、そしてあらゆる人々を相手にするツイッターだ。

 インターネットサービスの世界ではこれまで、最初にサービスを始めたものが市場を制するという経験則があった。新しいサービスでユーザーを一定数まで増やし、ユーザーを自分たちのサービスにすっかり慣れ親しませることで参入障壁を築く。先行するサービスは、新しい要素をどんどん加えながら、ユーザーを堅く囲い込んでいく。

 さて、この論理だと、SNSの競争環境はグーグルに不利ではないかと思われるかもしれないが、こうも言える。SNSの世界はまだ三国志の時代であり、天下統一はなされてない。しかも、グーグルにとって、ラッキーなことに、最大の強国であるフェイスブックに、民の不満が募っている。

 周知のとおり、フェイスブックの設定は「オプトアウト型」が中心、つまりユーザーが注意して外さないと、プライバシー情報が公開されたり共有されたりしてしまうことが多い。しかもその設定をころころ変えるので、ユーザーに極めて評判が悪い。

 フェイスブックからすれば、ユーザーデータの価値を高めて、高い値段で売るためにそうしているのであり、ビジネスのために必要なことだというだろう。ユーザーがプライバシー情報を公開すればするほど、そしてフェイスブックの中で「あれを買った」「ここへ行った」といった情報を友達と共有すればするほど、そのユーザーの行動データは増えていき、それがデータブローカーや広告業界に高く売れるのだ。むろん、グーグル・プラスもユーザー情報を集めるだろう。ただ、今のところ、グーグル・プラスのプライバシー設定については、フェアとの評価が多い。

 また、グーグルは、“3強”の特長のすべてを網羅できる点も有利だ。先ほど述べたとおり、グーグルのサークル機能は友達や仕事関係にそれぞれ対応できる上に、オープンにフォローしたりされたりすることも可能だ。また、リンクトインが企業に提供しているような人材探しのようなサービスも近く加える計画だと報じられている。

 もちろん、インターネット検索の雄グーグルも、これまで開発した新しいサービスのすべてを成功させてきたわけではない。鳴り物入りで発表したものの、ひっそりと消えていったサービスは多く、その中には「バズ」という別のSNSもあった。しかし、人々のインターネットへの入り口が検索からSNSへ移り変わる中、グーグルは今回、後発としての謙虚さを持って、再参入してきた。これは、大きく化けるかもしれない。

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瀧口範子
[ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。

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