独仏国債の信用低下
注目すべきは欧州だ。アメリカではない。欧州といっても、暴動が起きているロンドンではなく、最も恐ろしい危機を迎えている大陸欧州である。日本では米国債格下げのニュースが大きく取り上げられ、格下げが世界的な経済不安につながるとの指摘があるようだ。「アメリカも流動性の罠に陥るか」のような議論もあるが、私はアメリカではしっかりインフレが起こると思う。アメリカ経済の先行きに対する議論は次回以降にさせていただく。今回は欧州経済について述べてみたい。今後近いうちに、世界経済が混乱・縮小するとすればそれは欧州発だと思う。
ギリシャ、ポルトガルの次に危ないと言われている、イタリアとスペインの国債の保証コストが下がっている。これはめでたいことだろうか?8日付けのイタリア国債のCDSスプレッドは49ベーシスポイント(1bp=0.01%)下げて338bp。スペインは44bp低下の364bpとなっている。なんのことはない、 これはこの前日に、欧州中央銀行が「イタリアとスペインの国債を購入するプログラムを積極的に実施する」と表明していたからである。
問題は、問題債権買い取りの保証元となる優等生の尻に火が付き始めたことだ。アメリカが転落したトリプルAの格付けをいまだに維持する2か国、フランスとドイツの国債の保証コストが上がっているのだ。8日、フランス国債の保証が上昇し、ついには過去最高水準に達した。フランス国債5年物CDSスプレッドは15.5bp上昇し、過去最高の160bpをつけた。
9日には、ドイツ国債の保証コストが英国債のそれを上回った。ドイツ債のCDSスプレッドは、83bp。英国債は81bp。スプレッドの逆転は2008年1月21日以来で初めてのことだ。 ブルームバーグによれば、「感染がユーロ信用市場の最上階にまで及んだことは明らか。まるで山火事のようにドイツに燃え移った」と報道した。
スペイン、イタリアを救おうとしても、親元であるドイツやフランスがやられてしまう可能性が高まっているのだ。つまり、EUの財政優等生である経済大国も問題児を救う力を失いつつあるのだ。
それ以前の問題として、イタリア、スペインが財政立て直しという約束を守れる状況ではなくなりつつある。